72歩目「作戦開始」
・・・
ラドリオの目には防壁の上、うごめいていた影たちが何かを引くような仕草でこちらを見つめているのが分かった。
おそらく長弓の類を引いているのだろう。
防壁の長さを考えれば今ラドリオのいる位置は射程ぎりぎりといったところか。
「……本気でやるのか? あんたら」
「下位ならともかく、上位不死者の相手は俺には荷が重い。特に人間サイズの連中はな」
「適所適材ってやつよ。こう見えても乱戦やかく乱は得意だから任せて」
「防御に徹すれば数アワくらいはどうにかなります。よろしくお願いしますね」
仮の野営地点からラドリオ、アルト、ピア、フォルテの四人は巨大な門の正面まで移動してきた。
「しかし、暴れるのはいいんだが俺たち四人……いやラドリオは回収役だから実質三人か。三人が防壁の外で暴れるだけで相手の注意を引けるのか?」
アルトたちは本部に潜入する木乃美とマルスから目をそらすための囮だ。
彼らが防壁正面で相手の軍の注意を引く、その隙に木乃美たちが敵首都奥深くまで素早く潜入し敵の首魁を叩く。
作戦としてはこの上なくシンプルだ。
問題は、先ほどアルトが言ったようにたった三人が暴れただけで敵の注意を引くことができるのか? ということ。
そして肝心の木乃美たちの脱出手段と彼女たちが敵を倒せるかどうかだ。
「注意を引くことは任せろ。アルトたちは存分に『防壁の中』で暴れてくれればいい」
「え? 何を言って……え?」
文句を言おうとしたフォルテがラドリオを見て固まる。
唯の馬だと思っていたジェラートから突然コードが伸びてきてラドリオの持つ銃とくっつく光景を見れば、彼女でなくともそうなるだろう。
「え? お馬さんからjひもが伸びて……え?」
「……こっちのドラゴンホースについてくるから唯の馬じゃないと思っていたが……これは驚きだ」
キュルキュルという軽い音と共にラドリオの銃に光が集まっていく。
異変に気付いたのか周囲に散発的に矢が降り注ぐが、そのすべてが見当はずれな場所に突き刺さっていく。
「全員、目をつぶって出来れば伏せてろ。口を開けるのを忘れるなよ!」
ラドリオが銃を構え、フォルテとピアが呑気に仁王立ちしているアルトを引き倒すようにして伏せさせる。
「ぶっ飛ばすぞ! 『ドラゴンノック』」
引き金を引くと同時に、光弾が巨大な門扉へと吸い込まれるように消えて。
爆音と光をまき散らしながら爆発する。
爆風が周囲に降る雪を吹き飛ばし雪が一瞬止む。
再び雪が降りだした時には、門があった場所にはドラゴンが数頭入れそうな巨大な穴だけが残っていた。
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