70歩目「敵の首都」
青の読み通り、二頭の規格外によって引っ張られたソリは、日が沈み切る前に不死の国の首都を見渡せる小高い丘まで到着した。
「分隊長会議では、目的地は敵前線基地だと聞いていたのだがな」
「地図を見る限り相手の国に前線基地などは存在しません。地図に記された出発点から逆算すると、本体の目的地はこちらの港。教会騎士団の目的地はドラゴニアとの前線都市であるこの町だと思われます。あくまで推測ですが、私たちの目的はこの首都に近づくことその物だったのではないでしょうか?」
「プレッシャーをかけるってやつか。正規軍の目的地は不凍港を有する街で教会騎士団はドラゴニアへのけん制も兼ねているってことか。北の港にどれほどの価値があるのかは分からないがどちらも傭兵ごときには任せられないってことか」
「さらに相手の首都に近づく囮としての役割もあったのではないでしょうか? ただ我々が罠にかかったことで警戒はだいぶ薄れているようですが」
雪の中に白い毛布をかぶって擬態しながらアルトと青は首都の防壁を観察する。
高い防壁の上には篝火一つつけられていないが、暗闇の中を多くの影が規則的に動き回っているのが辛うじて観察できた。
「不死者は夜目が効くからな。明かりがいらないってわけか……でもこれじゃ近づけないぞ?」
「防壁の外に軍隊を待機させていないことが分かっただけでも良い成果です。それで目的地は……あそこですか?」
青が指さした先、険しい山に囲まれた不気味な古城が暗雲を背負い建っていた。
「くくったしかしそういう風に見えるが……いや、あそこじゃない」
「どう見ても敵の親玉が潜んでいそうな城なのですが」
愉快そうに笑うアルトを青は不思議そうな顔で見つめた。
「その通り、あの城に住んでいるのはこの国を治める王、至高天の一人にして命なき王 、不死王殿の居城だ」
「では彼が大将首なのでは?」
「ところが、かの御仁は戦争嫌い……いや面倒嫌いと評判でね。大概のことは優秀な部下に任せているらしい。だから今回の戦争を指揮している存在がいるとすれば……あそこだな」
アルトは城からゆっくりと街のほうに指をずらし、街の一番奥の大きな屋敷を指さした。
「たぶんあそこだ、一番警備が厳重だし門番の不死者もかなりの強者に見える」
防壁の上には篝火はないが、街中にはさすがに明かりとなる松明があちこちに掲げられている。
その館はしっかりとした動きの兵隊が巡回や警備をしているように見えた。
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