69歩目「ソリ移動」
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救難信号がどのような結果をもたらしたのか確認もしないまま、アルト分隊は行動不能になった大隊を離れて雪深い山道を北へと進んでいた。
雪深いということは寒さも増す上に背の低いマルスが一番動きづらくなるため不機嫌になる道行である。
彼ら6人だけであるならばだが
「……最初からこうやって軍について行けば良かったんじゃないか? 雪の中を何時間も歩かせたりせず」
「そうはいかないさ、他の連中は徒歩だっただろ? 俺たちだけこんな物に乗っていたんじゃ目立つ」
毛布にくるまり快適そうに『ソリ』に乗っているマルスに対して、少し高い位置からラドリオは苦笑いを返す。
部隊から離れることに決めた彼らがまず最初にしたことは『旅の足』を呼ぶことだ。
「……それであの馬がここまで来られるか? 唯の馬だろ?」
「まあそちらさんの馬と違って飛ぶのは難しいがちゃんときてくれるさ、俺のジェラートはな」
アルトが懐から筒を取り出して口に当てる。
人間に耳には音が鳴っているようには聞こえないが『旅の足』には拠点の村からかなり離れているのに聞こえるらしい。
対してラドリオがやったことは指笛を数回、決まった吹き方をしただけだ。
指笛は遠くまで木霊していったが、仮にかの村まで届いたとしても蚊の鳴くような音にしかならないだろう。
普通の馬なら聞き取れないがジェラートは必ず聞き取るだろう。
実際それから数アワ後には、拠点の村に置いてきたはずのジェラートとアルトのドラゴンホースがほぼ同時に彼らの元に到着した。
その二頭が到着するまでの間も遊んでいた訳ではない。
まずやったことは物資をかき集めることだ。
医療品や食料に水や燃料など。
未だ動けない上官連中の目を盗み、時には手持ちの実弾と交換して六人分の防寒具と食料などをかき集めた。
さらに小屋の納屋などを捜索して、残されている古い運搬用のソリを二台発掘してきた。
それを青とラドリオが突貫で補修と改造を施して二人ほどの人員と物資が比較的快適に乗れるようにする。
今マルスと青、ピアとフォルテはそれぞれの『旅の足』に引かれたソリの中に居る。
ラドリオとアルトはそれぞれの馬? の背の上だ。
ドラゴンホースは寒さや地形にも強く、さらに力も普通の馬以上にあるためスイスイと雪深い山の中を進んでいく。
普通の馬であればあっという間に置いて行かれてしまっただろうが、ジェラートも中身は普通の馬ではないためそれに追従できた。
結果アルト分隊は今までの数十倍の速度で雪道を北へと進んでいた。
「……この分ならば夕刻までには目的の都市近くまでたどり着けるでしょう」
マルスと同じく風よけのため毛布にくるまった青が空を見上げながら満足げにつぶやいた。
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