66歩目「悲惨な朝」
そして翌朝、周囲は予想通りの地獄絵図だった。
「おい、起きろよ……全然起きない」
「……ううっ」
「どうなっているんだ?」
傭兵部隊の殆どが薪の中に仕込まれた眠り薬にやられて目を覚まさない。
さらに起きていても体が麻痺して動けない人間がそこら中に転がっている。
動けるのは各分隊の中でも下っ端、簡単に言えば火の近くで寝させてもらえなかった上に昨晩肉にありつけなかったような人間だ。
分隊長や上官たちは軒並み行動不能に陥っていると言っていい。
特に小屋を占領した正規軍やそのとりまきともいえる傭兵たちは、薬が拡散しない小屋の中に居たために一人残らず眠り薬の餌食になっていた。
「……こりゃ予想通り酷い……寝不足になったかいがあった」
「夜の間風向きが何度も変わりましたから……不自然な風の動きでしたからこれも敵の策略でしょうね」 マルスが大きな欠伸をするのを青が同情するような目で見る。
アルト分隊は薪や肉に仕込まれた薬を回避できたのはいいのだが、夜間に何度も他の分隊の煙が流れてきそうになり何度も場所を変えることになった。
結果全員が一睡もできない状況になっていた。
特に普段大人ぶっていても肉体が子供のマルスには徹夜はきつかったらしく、欠伸をしたりうつらうつらと舟をこいでいたりする。
「しかしこの状況どうする? 放置しておくわけにもいかないがかと言って手の出しようがない」
アルトが困った顔で周囲を見回す。
倒れている人間は数千人に近い状態だ、たった数人で如何にかできる人数ではない。
「一先ず眠り薬が切れるまで様子を見るということでどうでしょうか? 私の見立てでは眠り薬の効力は10アワから14アワとみています。私たちも度重なる移動で寝不足ですし今のうちに仮眠をとってしまいましょう」
「ちょっと待って、その前に起きている人たちに警告してくるね」
「そうね、起きている人たちは気が弱そう、じゃなくて、物わかりのよさそうな人たちばかりだものね」
ピアとフォルテが眠気の残る頭を軽く振ってから走り出した。
「俺は……肉以外の食べ物でも拝借してくる。なに小屋の中の連中は全員寝ているだろうしな……こっちは大変だったって言うのに」
寝不足で不機嫌そうなラドリオは小屋の方へそして
「じゃあ俺たちは改めてテントでも張り直すか」
「そうですね、マルスはそろそろ限界のようです……訂正します限界でした」
倒れそうになったマルスを青が優しく受け止める。
「……起きているぞ」
「はい、もう少し起きていてください……あまり無理はせずに」
更新が安定せず申し訳ありません。来週には安定すると思います。




