61歩目「雪の中のヒトミ村」
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たっぷりと前進に二日かけて大隊は不死者の国内の村へと到着した。
「まさか、村が見えてからさらに一日かかるとは」
「走って行けばすぐの場所での野営は中々堪えたよな」
慎重に慎重を重ねたため罠の殆どを回避できたがその代り軍は遅々として進まず、前日に至っては村の直ぐ傍まで迫りつつも残り徒歩十ミニほどの距離を恐れての野営となった。
そのストレスもあってか傭兵たちが歓声を上げながら村へと入っていく。
「それにしても……人っ子一人いないな」
「そりゃあれだけゆっくり軍が近づいて来れば逃げる時間もあるだろうさ」
「ヒトミ村って言うらしいよ、この村」
木乃美が村の入り口付近に立てかけられた看板に目をやる。
皮肉なのか普段から置いてあるのか分からないが
「ようこそ、ヒトミ村へ」
と丁寧な字が彫り込まれていた。
小さな村で第一中隊が入ってしまえば村の敷地外にあふれてしまうほどのサイズだ。
寒さをしのぐためか石造りの家が十数件立ち並び、ひときわ大きい家は村長の家だろうか?
後は村で共同の納屋のような物と動物用の小屋が幾つか。
村の中心は井戸のある広場になっていた。
先ほどマルスがつぶやいた言葉の通り、村の中には人は勿論のこと動物すらもその姿が見えない。
周囲に足跡も残っていないことを考えると、かなり前に安全のためにどこかに身を隠したようだ。
お金になりそうな者もほとんどなく、食糧も各家庭には残されていなかった。
ラドリオを含めて斥候役が複数回入念に村の中の建物を一軒一軒調べてみたが人が隠れている気配もない。
唯一物音がした家を調べてみれば出てきたのは鼠が数匹だけだった。
寒さをしのげる建物くらいしかめぼしいものがない。
中では略奪ができなくて残念だと話す傭兵たちもいる。
「……ふう」
「……よかったな、人間相手に戦うことが無くて」
「そうだね」
木乃美がほっとしたような息を吐く。
彼女としては戦うのさえ抵抗があるのに、さらに無力な存在から物を奪いたくはなかったのだろう。
そんな中で納屋の方から歓声が上がるのが聞こえた。
「見ろよ! 保存食だろうが肉があるぜ」
「こっちはチーズだ!」
「おお、薪の蓄えまでありやがるな!」
どうやら村人たちも蓄えの全てを持ちだすことは出来なかったらしい。
納屋の中には恐らく災害への蓄えと思われる、保存のきく食糧が沢山収められていた。
冬の蓄えのための薪も山のように積んであったらしい。
これらの食料や燃料は一旦軍が接収して、各分隊に分配されることになった。
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