58歩目「守る側の受難」
『Side ???』
「まさか、このようなことになろうとは……」
ドラゴンゾンビの全滅、一体だれが予想しただろうか?
いや可能性として考えていなかったわけではない。
例えば帝国が新兵器を持ち込んだ場合、かの国は時に思いもよらない様な兵器を作り出す。
噂の域を出ないが、ドラゴンすら消し飛ばす兵器を作っているなどと言う話もあった。
例えば傭兵の中に凄腕が混じっていた場合、傭兵はピンからキリまで様々だ。
農夫とほとんど変わらない実力の者が群れて威張っていることもあれば、謙虚に蹲っている少年がドラゴンすら圧倒する実力の持ち主の場合もある。
だが今回の出来事はこちらの予想をはるかに上回っていた。
「ある意味凄腕の傭兵が混ざっていたようなものだが……あの気配は……」
傭兵と帝国兵の見かけ方は簡単だ、軍服を着ているかいないか。
問題の二人は軍服を着ていなかったので傭兵だろう。
一人はドラゴンゾンビの魔力を奪い取った少女だ。
彼女はドラゴンゾンビから飛行とブレスに使用する魔力を奪い取って無力するという荒業でドラゴンゾンビを空から叩き落した。
不死者の魔力を奪い取れるのは同じ不死者だけ、さらにドラゴンゾンビのような強い個体から力を奪えるということは、最上位に近い不死者ということになる。
「王のような役割持ちかもしれぬ」
不死者の国を治める敬愛する王は『不死王』という能力持ちだ。
彼はこれを『役割持ち』と呼んでいる。
「何にしろ厄介な話だ、あの少女がいる以上手駒を幾ら送り込もうと無意味だからな」
ドラゴンゾンビ以上の不死者となると自分を含めて僅かな高位不死者だけだ。
その誰もが国を治めるために多忙であり、侵略者を迎撃に行く暇などない。
かといって待っているだけではいずれ彼女たちは勿論他の二部隊も首都まで到達するだろう。
それは避けなければいけない。
幸い傭兵部隊以外の帝国軍には、少数の動く死体を分散配置する遅延行動でしばらく時間が稼げるだろう。
正規軍は慎重にこちらに向かって進んでくる、教会騎士団の方は念入りな浄化を行うためどちらも遅々として進んでいないのが現状だ。
よってこのまま進めば真っ先に首都に到着するのは最も功を焦っている傭兵たちとなる。
攻めても悉く無力化されて、待っていてもいずれ彼女はやって来る。
厄介な問題に感じるはずもない頭痛を感じて私は頭を押さえた。
「……せめて彼女だけならばやりようがあるのだが……もう一人が問題だ」
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