55歩目「勲章」
本日二つ目です。
『Side マルス』
「よって、今回の働きを称え君たち六名には『鉄螺子勲章』を授与する。戦場で私から送ることのできる最高の勲章だ。謹んで受け取る様に」
「はっ有り難き幸せ」
「ふむ……勿論金一封も用意している。今度も我が帝国と皇帝のために一層奉仕せよ」
「はっ」
ドラゴンゾンビの死体を処理するのに再び一日が経過し、戦場内に作られた簡易的な軍司令部にてマルスたちは勲章を受け取っていた。
勲章を授けてくれた軍のお偉いさん……帝国の階級をよく知らないマルスの見立てから大佐程度のおじさん……からマルスは恭しく勲章を受け取り一礼する。
帝国流の作法は先程別の上官から数回手本を見せられただけなのだが、マルスは完ぺきにやってのける。
ラドリオやフォルテもぎこちないながら如何にかこなした。
アルトは二人をチラチラと見ながら、ピアは緊張のせいかぎこちなくこなす。
一番マルスが心配していたのは、この手のことに縁のなさそうな木乃美だったのだが彼女も手本通りの動きで完ぺきにこなして見せた。
見た目の良さもありどこかの貴族と言っても通用するような立ち振る舞いだった。
そのせいか「下賤な傭兵の中に作法を完璧にする人間が二人も混ざっている」
と監視が若干厳しくなったのはマルスは知る由もない。
「勲章と金一封……只の傭兵なら十分嬉しいんだろうが」
「え? マルス君たちはうれしくないの?」
先ほどから歩みが軽い木乃美をみてマルスはため息をつく。
「嬉しいさ、きちんと評価ももらえたしな……この場でもらえたのが問題なんだ」
先ほどもらった勲章は「現場判断で送ることのできる最高勲章」だ。
つまり大げさに言えば、帝都までいって直接受け取ったりせず現場の判断でばら撒いてしまって良いものだ。
唯の傭兵であるならば一ヵ月は遊んで暮らせる額の金一封に、戦場での勲章による名声は十分すぎるご褒美なのだが。
マルスたち三人の目標は帝都に入れるほどの評価を得ることなので、この評価では足りない。
「つまり」
「つまり?」
「俺たちはもっと頑張らないといけないってことだ……つまりお前をもっと危険に晒さないといけないんだ」
「そっか」
目に見えて木乃美の足取りが重くなったが、しばらくしてまた足取りを軽くしはじめる。
「……でも何とかなると思うよ、マルス君とラドリオさんがいれば。最近はそう思えるようになってきたから」
微笑を浮かべる木乃美に対してマルスは驚いたような顔をしていたが、しばらくして小さくため息をつきながら苦笑した。
「……木乃美に強がりを言われたうえに励まされるなんて俺らしくもないな」
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