47歩目「ドラゴンゾンビからの光景」
『Side ???』
動く死体に意志はない。
彼らは生者への憎悪と食欲のみで動いている。
意志を持って行動させたい場合は、肉体に見合った魂を入れてやる必要がある。
あるいはより上位の不死者が命令するしかない。
ではドラゴンゾンビの場合はどうかと言うと、どちらの方法も難しい。
ドラゴンの肉体に見合った魂などそれこそドラゴンの魂位のもので、ドラゴンの魂を得るのは殺して肉体を得るよりもはるかに難しい。
ドラゴンゾンビ自体は下級の動く死体の一種なのだが、ドラゴン自体の生物としての格が高すぎて命令できるのは敬愛する『不死王』だけだ。
だからといって本能のまま暴れてもらっては困る。
それ故に上位の不死者が直接操るという方法をとるのだ。
ドラゴンゾンビの視界から、人間たちが慌てふためいているのが見える。
厄介な教会騎士団の旗印もなければ、帝国産の機械部隊も見えない。
思わず顔が笑みを浮かべそうになるのを我慢しながら、ドラゴンゾンビたちに突撃体勢を取らせる。
報告ではあの連中の中に、下位不死者を蹴散らした英雄が混じっているらしいが関係ない。
ブレスの前に一纏めに焼き払ってしまえば済む話だ。
そう思っていた矢先に何かが飛来してくるのをドラゴンゾンビの目を通して捕らえた。
爆弾か何かと警戒してみたが、どうやらそれは人の形をしているようだ。
「馬鹿め……空中まで飛んでこれたところで一人で何ができるというのだ」
そのような実力者がいないとは言わないが、そんな人間が半ば使い捨ての傭兵部隊にいるはずもない。
「焼き払って……それとも爪で……いっそ無視してやってもいいか」
その小柄な人影はどうやら何かで飛ばされてきたようだ、ならば無視して無力感を味合わせるのもいいかもしれない。
そう思っていた瞬間『その人影が破裂した』
「なに!?」
いや破裂したように見えた。
小柄な少女の体がはじける様に数えきれない白い腕が出現したのだ。
「なるほど、貴様が報告にあった『引き裂く者』か!」
回避を命じる間もなく、腕がドラゴンゾンビに到達する。
しかし腕がどんなに爪を立てようともドラゴンゾンビには傷一つつかない。
「ふふふ……何ということはない、ドラゴンを傷つけられるほどの腕力はないようだな」
腕でダメージを与えられないと分かると今度は手足や羽を絡めとる様に腕が巻き付いていく。
「無駄だ無駄だ、羽ばたいてはいるがこの羽で飛んでいる訳ではないのだ」
ドラゴンゾンビの羽はボロボロで浮力を生み出せない、元より魔力を使って飛んでいるのだ。
その動きを幾ら封じた所でドラゴンゾンビは落ちない。
口を封じた所で封じた存在事ブレスで焼き払えばよい。
勝ち誇った雄たけびを上げさせようとした瞬間、操っていた彼は凍り付いた。
人影が、いや少女がこちらを見つめている。
何故かはっきりとみられていると彼は感じた。
少女の唇がゆっくりと動く。
『無駄はどっち?』
少女が小さく首をかしげると同時に、彼はドラゴンゾンビたちが浮力を失っていることに気付いた。
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