46歩目「アルトカタパルト作戦」
『Side マルス』
周囲が段々と慌ただしくなってきた。
武器を構える者、届かないと分かっていても飛び道具を使う者、必死に周囲を観察して逃げる機会をうかがう者、中には座り込んで戦意を喪失してしまった者までいる。
そんな大多数を無視してマルスはひっそりとある連中を動きを探っていた。
第二中隊と第一中隊の間を何度も行き来する、伝令だ。
一度目の伝令が戻ってきて、再度出発してから既にしばらくたっている。
上の連中が無謀な命令を出すのは時間の問題だ、それまでにけりをつけないといけない。
作戦は決まったが、分隊は未だその作戦を実行できずにいた。
問題は角度と方向とタイミングだ。
誤った角度と方向だった場合この作戦は無駄になる、これはある程度大さっぱでもどうにかなる。
タイミングは遅すぎても早すぎていけない。
この作戦は一回限りの博打のような物で二度目はない。
慎重に素早く行動する必要があった。
角度と方向を担当したのは、フォルテだ。
ピアが伝達役に回り、ラドリオはドラゴンゾンビの監視、アルトと『赤』が実行役だ。
ちなみにマルスの役目は全体監督と上の連中の監視である。
相手に感づかれないように観察するのもマルスは得意だった。
「いい? よく見ていて!」
フォルテがゆっくりと矢を引き搾り弓なりに撃つ。
届くはずもない敵を狙ってではない、矢はゆっくりと山なりに飛んでアルトの足と足の間に突き刺さった。
「アルト、今の軌道で来るから」
「分かった、間合いは自分で測る」
「木乃美ちゃんは、今の軌道をなぞるように……できそう?」
「僕は木乃美じゃなくて赤だってば……できるよ? やりたくないけど」
「ラドリオ、敵の位置は?」
「今の軌道だとちょっと遠いか? あと30セクってところか」
準備は整った後はタイミングを待つだけという所でマルスの目が、中隊長の所へ伝令が走り込んでいくのを捕らえた。
「不味い……赤! 走れ!」
「まて、まだ距離が」
「具体的な命令が来てからじゃ遅い。『前方を進み、障害を排除しつつ前進せよ』って命令が生きているうちにぶっ飛ばさないといけないんだよ。行け!」
ラドリオの静止を遮り、マルスは赤にゴーサインを出す。
瞬間、赤が先ほどの矢と同じ軌道で『アルト』へと飛び掛かった。
「痛くしないでねぇ!!」
「盾狙いだが保証は出来……ない!」
落下の勢いが乗った赤の盾の振り下ろしの一撃を、アルトの全力の切り上げが迎撃する。
轟音ともいうべき金属の衝突音と共に、空中で踏ん張りの効かない赤の体は二人分の打撃力を受けて矢のように吹っ飛んでいく。
まっすぐドラゴンゾンビの方向へと。
いつもお読みいただきありがとうございます。
木乃美ロケット作戦と題名を迷いました。




