45歩目「逃亡を妨げる音」
『Side スマリー少佐』
「なに? ドラゴンゾンビだと!? 確かか」
この大隊を預かるスマリー少佐に急報が届いたのは、マルスたちに遅れること数ミニ(分)後であった。
「間違いありません!」
「ワイバーンゾンビだとか、大型の鳥類ではないのだな?」
「はい」
部下のハッキリとした返事にスマリー少佐は顔を青白くさせる。
ドラゴンはその鋭い爪と牙、飲まず食わずでもしばらく行動できる体力、素早い飛行能力とドラゴンブレスによる遠距離能力、長寿でありそれに伴って知能もかなり高い。
この世界でもトップクラスの生物である。
したがって英雄の力をもってしてもドラゴンを撃退できる存在は多くはない。
殺害出来る存在となればさらに少ない。
竜の国で下位とされる竜が相手であったとしても、戦闘系能力を持った英雄が複数で、その中に一等星級がいて初めて互角。
中位となれば一等星や特等星のチームでも厳しく、上位となれば特等星級複数でも厳しい。
ではぎゃくに下位が最も弱いのかといえばそうでもない。
亜竜と呼ばれる存在、ワイバーンなど竜種に属するが竜から見ても下位存在である種族が存在する。
これが最もドラゴンと呼ばれる中では弱い、本物のドラゴンは亜竜と同列に考えられることをかなり嫌がるが。
しかしこのワイバーンであっても、一般人ではおそらく勝てない相手だ。
熟練の戦士が複数、或いは熟練の魔法使いをもってして互角に渡り合える相手である。
そんな化け物が相手だ。
ほぼ傭兵部隊なんていう外れ部隊を引いてしまった少佐が青くなるのも無理はない。
帝国にも竜に対抗するための武器はある、幾つもある。
だがそれらは最新設備でありまた高級装備であるために少佐たちには支給されていなかった。
彼らに支給されている連発式の銃は優秀ではあるが、ドラゴンの防御を突破できるほどではない。
効果がありそうなものは、攻城戦用に用意してきた爆薬位だが、空を飛んでいるドラゴンゾンビに対してどうやって爆弾を設置しろと言うのか。
「すぐに撤退の準備、傭兵たちを前方に固めろ。方円陣だ」
「……了解いたしました」
部下はにやりと笑って前方の中隊へと指示を出す。
空から範囲攻撃をしてくる相手に固まるなど正気の沙汰ではないが、相手の注意を引くにはうってつけだ。
幸い上官の脱出用に|高速で雪上を走れる機械が用意されている。
試運転をしていないことが不安だが、傭兵たちが足止めになっている間に逃げ切れるはずだ。
突然金属を激しくぶつけ合ったような轟音が前方から響き渡った。
何事かと音のする方を見た少佐は目を疑った。
「……女児が空を飛んでいる」
彼の目に映ったのは大砲から飛び出した弾のように一直線に飛んでいく少女の姿だった。
いつもお読みいただきありがとございます。
戦闘に入れませんでした。




