43歩目「ローストへのカウントダウン」
本日二話目です。
『Side ラドリオ』
ラドリオは目と耳が良い。
これは彼の世界で竜騎兵として訓練された際に手に入れたものだ。
遠くから飛んでくる竜を発見するための目と耳。
そして高高度から地上の兵を発見するための目と耳でもある。
つまり三人の中では一番偵察能力に秀でている。
マルスに空を確認してくれと言われた時は、半信半疑だったがその耳がかつて聞きなれた物を捉えた。
重い羽ばたき、それは空を飛ぶ巨体を制御するための物だ。
聞き間違いかと思いつつも、ラドリオはじっと前方の空を見つめる。
初めは軽い違和感だった。
何処までも同じような灰色に覆われた白い雪の舞う空に、どことなく違和感を覚えた。
それが三つの濃い灰色の点のせいだと気付いた時、ラドリオの体に悪寒が走った。
「マジかよ」
思わず声が漏れる。
驚きと恐怖のあまり思わず漏らした声を、マルスたちが聞き逃すはずがなかった。
「何が見えた」
「……いや」
「何が見えた、はっきり言え」
見なかったことにしようとしたのだがマルスに無理やりしゃがまされて肩を揺さぶられる。
「……空を飛んでくる何かが三つ、羽ばたきから考えて竜だ。しかもご丁寧に敵陣のど真ん中から隠密飛行してくる竜だ。間違いなくドラゴンゾンビだな」
「……おいおい、連中の奥の手じゃなかったのか?」
「俺が知るかよ!」
思わず大声を出してしまい、周囲の注目が集まる。
アルトたちも何事かと寄ってきてしまった。
「どうした、足元で何か見つけたか?」
「足元は囮だ、前方から竜らしき影は三つ。こっそり飛んでくるらしい」
竜という単語にアルトたち三人も体を震わせて反応する。
「確かか?」
「はぁ間違いの方が良かったぜ」
詰め寄るアルトにラドリオがため息交じりに答える。
木乃美を含む女性陣は、目を凝らして飛んでくる竜を探しているようだ。
「ドラゴンゾンビの戦闘力を知りたい、やれそうか?」
「楽勝だぜ。ただし連中が地上で肉弾戦を仕掛けてくれりゃな」
アルト曰く、ドラゴンゾンビの強さは死体の元となった肉体に比例する。
これは動く死体の名を関する魔物共通だが。
厄介なことに、腐ってもその防御力は一割程度しか低下せず、飛行能力やその他の特殊能力、例えば竜の息吹なんかは健在だ。
その頑丈さと生命力故、銃を含む生半可な飛び道具では落とすことすら敵わず、強力な剣や槍は地上に降りてこない限り無力となる。
「このままじゃ上からブレスでこんがり焼かれてお陀仏だな」
アルトの言葉に全員がごくりと息をのんだ。
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