41歩目「足元にご注意」
いつもより遅れてしまいました。
二日目が無事終わった。
本当に何も何も起こらず平穏な行軍だったため、逆に罠ではないか? とマルスが警戒する程度には平穏だった。
奇襲もなければ待ち伏せもない。
今が戦争中で行軍中であることを忘れてしまいそうな天気のいい一日だった。
翌日からは、うす曇りで雪がちらつくようになる。
気温が一層下がったように感じられてマルスの機嫌がますます悪くなった。
マルスの機嫌に連動したわけではないのだが、行軍の方も順調とは言えなくなってきた。
「うわぁ!」
「また出やがった!」
「早く斬り倒せ!」
行軍を初めて数十ミニ(分)今日何度目かの傭兵たちの怒声と悲鳴が周囲に響き渡った。
「また例のトラップか」
「地中に動く死体が埋まっていて、誰かが上を通ったら突然飛び出してしがみついてくる奴な。今日でもう五回目らしい」
形だけでも周囲を警戒するように金槌を構えるマルスにラドリオが小声で返事を返す。
雪で若干視界が悪いが周囲に敵の姿はない様だ。
不死者特有の腐ったような匂いもしない。
「見分ける方法はないのか? こう何度も立ち止まられると先行きが不安だ」
「そもそも雪が降る前から埋まっているっぽいからな、鼻の利く奴でも判断が難しいらしい。それこそ長めの棒で地面を突っつきながら歩くか?」
「そんなことやっていられるか。俺はさっさと温かいたき火の傍に行きたいんだ」
上層部の方でもどうにかしようというような動きがあるようだが具体策がある訳でもないらしい。
堅実な方法で行くならば、ラドリオの言う通り長い棒か何かで安全を確認しながら進むしかないのだが、地面をつきながら歩いても大丈夫なほど丈夫で長い棒を分隊分用意することもできないらしい。
結果生まれた対処法は、
一、戦闘は斥候系など足の速い者にし、十二分に足元に注意すること。
二、後ろを歩く者はなるべく前を歩いた者の足跡をなぞること。
の二つだ。
全く持って気休めである。
さらに一度歩いて大丈夫だと思った所でも、後々敵が飛び出してくることもあったため先頭だけでなく全員が足元を警戒しながら進むことになる。
「……」
「お前も足元を見ろよ」
足元を見ないでぼんやりと空を眺めている木乃美を、寒さでイラついているマルスが八つ当たりをする。
木乃美は少し困ったような顔をしながら首を横に振る。
「私は灰ちゃんが感知してくれるから平気。それよりも気になっちゃって」
「何がだ? 雪が珍しいわけでもないだろう?」
「どうして足元を私たちに注目させたんだろうって。足元から出てくるゾンビさんって精々足止めくらいしかできないでしょ? 何か別な意図があるんじゃないかなって」
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