39歩目「戦いと夜が明けて」
『Side マルス』
手合わせとやらが無事に終わった。
勝ち負けは兎も角として、死ぬことのない戦いでよい経験を詰めたのではないだろうか?
木乃美にとってもこの戦いは貴重な経験になっただろう。
一つ問題があるとすれば最初に一撃の音が大きすぎたせいでやたらと注目を集めていたということだろうか?
爆音で起こされた傭兵連中が遠巻きにこっちを見ているし、後方からは視線を感じている。
一度マルスが目を向けた時にきらりと何かが光ったことを考えると、望遠鏡か何かでこっちを観察していたのは間違いないだろう。
それに気づいているのかいないのか、治療されているアルトと赤は
「あんな手があるなんて思ってなかったよ。あのまま行けば僕の勝ちだったのに」
「いや、わりととっさの判断だよ。あと少し殴られていたら倒れた後そのままだっただろうな」
などと反省会を踏まえた談笑をしている。
「まだ時間があるし、次は私と勝負する?」
「いやいや、俺たちの武器じゃ寸止めは難しいだろ?」
二人の戦いで火が付いたのか、フォルテにラドリオが絡まれている。
「直接狙い合わなくてもいいじゃない。的か何か用意してさ?」
「弾がもったいないだろ、矢は回収できるかもしれないけど俺の弾は回収が難しいんだよ」
ラドリオはやる気はないようでマルスはほっとした。
その流れで自分も摸擬戦をやらされては溜まらない。
木乃美の能力はどうにか誤魔化せたかもしれないが、自分の能力は誤魔化しが効かないからだ。
ラドリオからの受け売りではあるが、マルスの能力は良く目立つそうだ。
「マルスの坊やの攻撃を直接見たことはないがな、聖都で使ったタイミングで嫌な波動? 力? を感じたんだ。多分魔王と戦ったことのある人間ならピンとくるだろうな」
自分の能力が遣っただけで目立つという事実はマルスは思いつかなかった。
今回の戦いではできるだけ温存した方がいいだろう。
そもそもこの能力に寸止めもくそもない。
当たれば文字通り一撃必殺、防ぐことができたのは至高天の聖女ただ一人だ。
「そろそろ戻るぞ、注目を集めすぎたし朝の分隊長会議もあるだろう?」
「ん? もうそんな時間か。大分日も高くなってきたし戻るか」
気づけば薄暗かった周囲も日の光を雪が反射して眩しい位だ。
「じゃあ優男君の腕試しはまた今度ね」
「……お手柔らかに頼む」
治療の終わったアルトが立ち上がり、それにフォルテとピアが続く。
後に続くことしてふと言い忘れていたことをマルスは思い出した。
「木乃美」
「なにかな?」
「おつかれさんだな」
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