35歩目「油断大敵の初撃」
昨日寝過ごしたので、今日も二回更新です。
始まる前に一悶着あったが、ルールを改めて決めて二人は再び向かい合った。
ルールは三つ。
開始の合図はラドリオが行う。
どちらかが降参か気絶したら負け。
周囲に影響を及ぼさないように気を付けること。
「二人とも準備はいいか?」
「いつでも」
「いつでもいいよ!」
アルトが再度体験を構え直し、赤も手を振り答える。
これから遊びに行くような手軽さだ。
戦闘訓練よりも竜と戯れる方が好きだったラドリオにはちょっと理解できない世界である。
「……はじめ!」
「先手必勝!」
しばらく間をおいて始まりの合図を出す。
聞きなれない言葉と共に赤が、雪を巻き上げながら突撃をかけた。
『軍神』の力を生かした先制攻撃、受ければ並大抵の人間は吹き飛ばされ、躱しても衝撃と勢いを見せ付けられる。
強敵との戦いを何度か経験した赤が編み出した、自分の能力を生かした初撃だ。
対してアルトが選んだのは、真正面からの迎撃。
「(そういえば、昨日も巨大な熊を吹き飛ばしていたっけ。武器から考えてもパワー対決か……もらったな)」
パワー対決を選んだ相手を失策だと思いラドリオは小さく笑みを作る。
赤の能力『軍神』は力の強化の最上位、この能力を持っている人間は滅多にいない。
下位互換の能力で対抗するならば、それこそ大鬼と人間位の筋力の差が必要になる。
二人の盾の一撃と剣の一撃がぶつかり合う。
衝撃波が強風のように周囲の四人に吹き付け、ラドリオの予想に反して赤が突っ込んできた時の倍以上の速度で雪面の上を吹き飛んでいく。
雪を巻き上げ、何度かバウンドした後に頭から雪面に突っ込んでやっと赤の動きが止まった。
「……馬鹿が、相手の能力も分からないで突っ込むからだ」
「過保護なマルスの坊やにしちゃ珍しい。いつもなら始まる前に警告するだろ?」
「せっかく命の危険のない戦いだ。体で覚えた方が身に染みるだろう?」
赤の頑丈さを知っているラドリオとマルスはのんびりと談笑しているが、向こうの女性陣は大慌てでアルトに突っかかっていた。
「馬鹿! 加減しなさいよ。相手は女の子なのよ?」
「そうです! 早く治療に行かないと」
「いやいやそんなこと言われてもな……それにまだ終わってないから下がってろ」
二人がびっくりして振り返るのと赤が雪から上半身を抜くのがほぼ同時だった。
「あーびっくりした」
「……今の一撃を食らってびっくりしたで済むのはお前位だ」
マルスが呆れた声でにつぶやいた。
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