33歩目「木乃美の機転」
「あーそれはだな」
「君は黙っていてくれるかな?」
どうにかフォローをしようと口を開いたマルスをフォルテが睨みつける。
「私たちは木乃美ちゃんと話をしているの。彼女の能力なんだから彼女に聞くのが一番でしょ?」
それに君は一番口が上手そうだし、という呟きをマルスは効かなかったふりをすることにした。
相手側の言い分が尤もで隙が無い。
こうなったら木乃美の機転に期待するしかなさそうだ。
「おい、大丈夫なのか?」
「さあ、こうなったら仕方ないだろう。アイツだって馬鹿じゃないしな」
見ていてほっておけない所はあるが、それでも愚者ではない。
それがマルスの木乃美に対する評価だ。
「……あの、本当に話さないとダメですか?」
「あ、うん。できれば話してほしい」
「私たちも不安になるからできれば」
初手、怯えつつ上目遣い攻撃。
これはなかなか聞いたようでせめての二人は少し穏やかになる。
「アレはわざとだったら、女は怖いなとなるんだが」
「あいつのは多分素だろうな」
「分かりました、私の能力は……『英雄を召還する能力』です」
「は?」
「え?」
女性陣が驚いたような声を上げた。
「むぐっ」
「黙ってろ」
ついでに驚きの声を上げそうになったラドリオの口をマルスは塞ぐ。
「それってどういう能力なの?」
「私の能力は、その場にあった能力の『英雄』を召還することなんです」
「でも、あんな人知らないよ? 不死者系だけとはいえ敵を寄せ付けない人がいたら。どこかの組織に所属してなくても目立つと思うんだけど」
「私の召喚する英雄は、今存在する『英雄』と呼ばれる人たちじゃなくて、過去に英雄と呼ばれた人たちなんです。それもこの世界に限らないいろんな世界の……だから誰も知らなくても当然です」
木乃美の説明に、理解が追い付いていないのかぽかんとした様子で聞き入っている女性陣。
その光景を見ながらマルスはにやりと笑みを浮かべた。
「なるほど、アイツも考えたな」
「俺にもよくわからないんだけど、マルスの坊主は分かったわけ?」
「つまり「私はすごく強い人に変身できるけど、その人は場合によって毎回違う人だし、出自も自分にもよくわかりません」ってことだ。これなら姿が違おうが、能力が異質だろうが「私は良く知らないの」で通せるからな」
「なるほど、姿がいくつかあっても不審がられないし、異世界の歴史からってことにすれば、それでいてその人物が本当に存在したかどうかは調べようがないって訳だな」
「まあ『いろんな世界から人が召喚されているこの世界』だから通るいい訳だが」
いつもお読みいただきありがとうございます。
要は某英霊みたいなものという説明です。




