32歩目「異質」
と、このまま明日の朝まで時間が進めばよかったのだが。
向こうの女性陣はアルトほど甘くなかったようで。
「じゃあ話も終わったし解散で」
「……まって、まだ話は終わってない」
席を立とうとしたマルスを半ば無理やりフォルテが引き戻した。
当然だろう、まだこちらの称号を聞いただけで彼女たちの不満は何も解消してないのだ。
マルスも彼女たちが何を言いたいかは分かっている。
端的に言えばマルスたちは何者か? ということだ。
マルスもあえて触れてこなかったことだが、木乃美の能力は異質だ。
彼女の、正確には彼女の人格の能力は一人を除いて前例のない物ではない。
王都で戦った地龍も赤と同じ能力だったことからそれは間違いないはずだ。
唯一例外の闇にしても、マルスやラドリオが知らないだけで同じ能力の使い手がいるかもしれない。
これに関しては英雄を集めている勇者組合や教会騎士団に問い合わせる訳にもいかないので何とも言えないのだが。
また自身の姿を変化される能力もそれほど珍しくない。
ラドリオから聞いた話ではあるが、人の姿から獣人に変身したり、下半身だけ魚になったり、或いは燃える亡霊のようになれる者もいるという。
だが、この二つを両方持っているとなると話は違ってくる。
英雄につき能力は三つ。
これはこの世界の原則であるとマルスは理解している。
なぜ理解しているのかはこの際置いておく。
ならば木乃美が自身の姿を変化させる能力であったとして、その姿でさらに別の能力を使うことは、四つ目を使っていることになる。
これはありえない。
さらに言えば変身後の姿を複数持っていることも、変身系能力からすればあり得ない……らしい。
こちらはマルスがラドリオから聞いた話だ。
そして忘れがちだが英雄の能力はそれまでの経験と才能に依存する。
剣を振ったことのない人間にいきなり剣術の才能が溢れたりはしないし、魔法のない世界から来て、魔法を知らなかった存在が魔法の才を得ることもない。
では、幼い少女のような姿で、不死者を圧倒する彼女は一体どんな経験と才能を持っているように見えるのだろうか?
マルス以外にはまず間違いなく異質に映る。
ラドリオだって説明されて実際に見るまでは、半信半疑どころか七割信じていなかった。
閑話休題
「木乃美ちゃん、貴女の能力は一体何なの?」
「納得のいく説明をしてもらわないと、私たちは貴女に背中を預けられない」
異質な物を理解するにはどうすればいいか? 答えは簡単本人に聞けばよい。
案の定二人は彼女に詰め寄っている。
木乃美に詰め寄っていくこの二人をどう説得すべきだろうかと、マルスは頭を抱えた。
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