27歩目「白い腕の脅威」
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一瞬俺はキンググリズリーゾンビが恐怖で固まっているのかと思った。
それくらいうつむいたまま
「クルナ……クルナ……クルナ」
とつぶやき続ける少女が不気味に見えたからだ。
だがよくよく目を凝らしてみると巨大な半透明の白い腕が、キンググリズリーゾンビの顔面を掴んで押しとどめていることに気付いた。
キンググリズリーゾンビは身を捩ってその拘束から抜け出そうとしているようだが、まったく抜け出すことができないようだ。
普通の生物のもがきとはわけが違う。
文字通り体が壊れて砕けたり剥がれるのを厭わない足掻き。
十数人の人間でも軽々と吹き飛ばしかねないその動きを、巨大な腕は完全に封殺していた。
「クルナ!」
少女が叫ぶと同時に、巨大な手のひらがゆっくりと頭を握りしめ始める。
「グルるるるああああああ!?」
キンググリズリーゾンビが鳴き声を上げた。
俺には威嚇や咆哮なんかではなく、恐怖の叫びのように聞こえた。
ありえるのか? ゾンビが、しかもキンググリズリーほどの強大な魔物のゾンビが悲鳴を上げるなど。
俺だけでなく、戦っている者たちが全員、敵のキンググリズリーゾンビも含めてその光景を唖然とした表情で見ていた。
「……消えて」
少女が人形を抱きしめる。
同時に巨大な腕は、弱弱しくもがくキンググリズリーゾンビを軽々と持ち上げ、投げた。
さっき俺が弾き飛ばした速度よりも遥かに速いスピードで、それは敵陣へと叩きこまれた。
雪原に刻まれたクレーターが威力の大きさを物語っている。
あまりの出来事に動く死体ですら呻くことを忘れた様に静かになった。
「……全部消えて!」
沈黙を破ったのはまたしても彼女だ。
彼女の叫びと共に、巨大な腕が裂けた。
少なくとも俺には裂けた様に見えた。
裂けて無数に増えた手がまっすぐこちらに向かってくる。
「うおっ!?」
反射的に躱したが、実害はないようで避けきれなかった者たちも身震いをさせつつ首をかしげている。
ただ
「ぐるああああああ!?」
キンググリズリーゾンビ達だけがまとめて悲鳴を上げる。
全方位に伸びたように見えた無数の腕は、最終的にこちらで暴れているキンググリズリーゾンビに集中しその体を掴んでいる。
次の瞬間にすべての巨体が、最初に巨大な腕に飛ばされた個体と同じように敵陣への砲弾と化した。
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