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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第四章「アンデット戦争」編
245/327

25歩目「軽トラが突っ込んでくるような物」

『Side アルト』


 雪原の端と端でにらみ合いが続く。

 雪原と一言で言ったが、こちら側の方が地味に標高が低い。

 緩やかな雪の斜面を駆け上がるのは愚策だ。


 相手もそれを待っているのか一向に動こうとしない。

 不死者(アンデット)と言えば食欲しかなく本能に従って暴れるだけの存在だと思っていたが、それは違うみたいだな。

 少なくとも目の前の連中は統率がとれている。

 情報では上位不死者(アンデット)はいないという話だったが、どこかに隠れているのか?

 あるいは遠隔から操作できるのか。

 どちらにしても厄介な存在だ。


 にらみ合いは数分続いただろうか?

 相手側がしびれを切らしたように侵攻を開始してきた。

 有利な陣地を捨ててでもこちらを殲滅しようという魂胆だろうな。

 何せ後方には少なくない魔法使いもいる。

 遠距離からの魔法攻撃を警戒しての行動だろう、肉体の有る不死者(アンデット)が炎に弱いのは周知の事実だ。

 如何に周囲に火を消すには十分な雪が有ろうとも唯の案山子のように立っているのは頭の鈍い連中でもよろしくないと気付いたらしい。


 相手を引っ張り出すことには成功したが以前数の劣勢は変わらないし、相手は坂で勢いがついている。

 前衛の俺たちには厳しい状況だ。

 ここを突破されればあっという間に俺たちは不死者(アンデット)の豪華なディナーになる。

 いやそれならまだマシだろう。

 連中の仲間入りをして、生前の家族や仲間や親戚や友人に襲い掛かる可能性だってある。


「お、生きのいいのが来たな……準備はいいか? 木乃美ちゃん」

「……出来てる」

 前方から押し寄せてくる動く死体(ゾンビ)の群れ、その中から突出して出てくるデカい影がある。

 隣の少女の声がさっきと違う少し高い声だった気がするが、一先ず置いておこう。

 俺は目の前に敵に集中する。


 小さな小屋のような大きな焦げ茶色の体に丸太のような腕と鋭い爪、体は分厚い脂肪と強靭な毛皮に守られ、足も馬車並みに早い。

 キンググリズリーと呼ばれる魔物が不死者化(アンデット化)したもの。


『ゾンビキンググリズリー』 

 戦闘力は低位の竜と同程度で、熟練の傭兵がチームを組んで討伐するような魔物のゾンビだ。


 敗れた毛皮や濁った瞳以外はキンググリズリーと同等で、防御力自体は少し下がったがその分体力と攻撃力が増えている。

 おまけに生前と違い、傷を負っても撤退することを考えず、偽りの命が尽きるまで向かってくる危険な存在だ。

 そんな魔物が計六匹、濁った唸り声を上げながら猛然と迫ってくる。


「受け止めよ! 何としても後ろに通すな!」

「……無茶をいってやがるな後ろの連中は」

 声を張り上げている背後の指揮官は自分がどれほど無茶なことを言っているか自覚はあるのか?

 アレを受け止めるには重装鎧に大盾を装備した兵隊が十五人は必要だぜ? おまけに前の十人くらいは使い物にならなくなる前提でだ。


俺がいて本当によかったな、他者にはあの重量と速度は脅威だが俺には好都合。

 むしろ並のゾンビよりは能力的に相性のいい相手だ。

いつもお読みいただきありがとうございます。

戦闘シーンまでいきませんでした。

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