19歩目「男たちは説明に困る」
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『Side ラドリオ』
「同族殺し、しかも不死者限定とはまた難儀な能力だな」
「おまけに人見知りで恐がりと来てる」
マルスの言葉にラドリオは頭を抱えた。
どうやったのか今だによくわからないのだがマルスは無事に新しい人格の能力を聞き出したようだ。
それ自体はラドリオにとっては喜ばしいことだが、肝心の能力が不味い。
「もしかしなくても厄介なの? 先生」
「先生呼びってことは、つまり木乃美の嬢ちゃんは説明してほしいってことだな。いいぞ、俺の分かる範囲で説明する」
不安そうな木乃美にラドリオは笑顔を向ける。
厄介な能力ではあるが不安がるほどではない。
はずだ。
「同族殺しっていうのは、一部の亜人やモンスターが持っている能力の一つだ。効果は様々だけどな」
昨日見たような一方的な能力は見たことはないという言葉を飲み込みつつ、ラドリオは説明を続ける。
「学者さんの話では、縄張り争いのためだとか、増えすぎた仲間を減らすためだとか理由はいろいろあるみたいだが、人間の場合は話が違ってくる」
「……暗殺者専門と言ってもいいからな」
「嬢ちゃんの能力は対人間ではないようだし、仮に対人間だからと言って問答無用で捕まったりすることはないさ、警戒はされるだろうがな」
「魔王と言う能力がどれだけ厄介かわかるってもんだ」
魔王以外の英雄の能力で誰かが拘束されたという噂をラドリオは聞いたことはない。
聞いたことがないだけで水面下でそういうことは起こっているのかもしれないが、今は関係ないので口には出さない。
「不死者にまつわる能力についても一緒だな。ただ忌諱されるのは確かだからそういう能力持ちは殆どこの不死者の国に現れるし、稀に他所で現れた場合でもこの国に移動してくる者が殆どのようだ」
「国に処罰されることはない?」
「法を犯していなければな」
不死者関連の能力持ちでも、墓を暴いたり人を殺したりしなければ罪には問われない。
例外は竜の国だけだ。
不死者の国とドラゴニアは不仲で英雄が現れた当時、正確には頂点に二人の至高天が付いた時から犬猿の仲だ。
とくにドラゴンのアンデット『ドラゴンゾンビ』の存在自体が両国の中を最悪にしていると言っていい。
ドラゴニアにとっては死体を冒涜されたうえに、自分たちの元仲間と戦わされるのだ。
恨みつらみと貯まろうと言うものだ。
不死者の国にとってはドラゴンゾンビは貴重な戦力だ。
できれば積極的に作りたいというのが本音だろう。
相手の戦意を削げるというならなおさらだ。
話が逸れたが、木乃美の新しい能力は忌諱はされるが罰されるほどではないということだ。
「ただそれを話して信用してくれるかって言うのが問題だよなぁ」
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