18歩目「同じであり同じでない者」
領域の掃除には少なくとも数時間はかかったと思う。
正確な時間は分からない、そもそも円卓に入っている時間と現実の時間が同じように流れているのかもマルスにはよくわからないが。
掃除道具が羽箒だけでなかったのは幸いだった。
マルスの身長では天井の蜘蛛の巣を取るのに柄の長い箒が必要で、羽箒だけであったら天井は勿論壁の半分以上を掃除することができなかっただろう。
マルスが掃除を終える頃には円卓の住民? メンバー? の彼らも殆ど掃除を終わらせていた。
中には部屋に帰ってしまった人格もいるほどだ。
円卓もどうにか綺麗に、とは言えないが座って話す程度問題ないほどには元通りになった。
未だに汚れているのは、『謹慎中』と書かれた札が張り付けられた白の領域、未だ姿を見せたことにないメンバーの領域、そして皆が掃除する中自分の領域に座り込んでマルスの方をじっと見つめている灰色の影だ。
話すでもなく帰るでもなく、ただじっとマルスの方を見つめていて正直不気味だ。
ボサボサの長い髪の毛に、灰で薄汚れたような白いワンピース、色白では言い表せないほどの白い腕に黒く汚れた爪。
よくわからない赤黒い液体で汚れて所々破れたクマのぬいぐるみを抱えた少女で、年齢は緑より少し上でマルスより少し下に見える。
今までの人格も普通とは呼べない部分が多々あったが、彼女は更に異様だ。
「はっきりいって、他の連中がおびえるのも分かる。そこの闇の奴や白い奴の見た目も周囲の注目を浴びる物ではあったが……こいつはなんだ? このなんというかその」
「恐怖をあおる?」
「一般的にはな」
暗に恐くないと答えるマルスに対して闇はくすりと笑う。
他の人格たちも何処か受けたのか小さく笑い声が響いた。
咳払いをしてそれを黙らせてからマルスは少女を指さした
「あいつは何だ?」
「あいつとは失礼だな? あれでも一人の少女だぞ? 少々特異な存在ではあるけどな」
「灰」
「しゃべったぞ」
「そりゃ喋るわ、その子だって人間だもの……半分はね?」
「半分?」
少女が話したことにも驚いたが、さらにその後の言葉にもマルスは驚いた。
まるでもう半分は違う生き物であるかのような言い草だったからだ。
「マルス君の分かるように説明するなら……あの子は不死者であり、不死者ではない者。不死者を恐れる者であり、不死者が恐れるべき唯一の存在。あの子の能力は単純明快よ」
「……」
「灰の能力は『同族絶対有利(不死者)』。人でありながら、不死者でもあり、そして不死者殺しなのよ」
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