17歩目「6人目」
『Side マルス』
行軍第一夜、状況はハッキリ言って最悪だ。
さすがに昼間に襲撃があっただけあって各分隊事に見張りをたてているみたいだが、その見張りの殆どがこっちを見ている。
ご丁寧に武器を構えたままだ。
彼らが襲ってこないのは奇襲を退けた一番の功績が木乃美にあるからだ。
木乃美の新しい人格の能力が不気味で不死者に近く怪しいのは間違いないが、同時に彼らも自分たちが救われたことを理解しているのだろう。
状況が変わらない限り襲われることはないだろうとマルスは思っている。
例えば、上の方傭兵を率いている帝国の上層部が捕縛を命じるとか、食糧がこかるするとか、不測の事態に陥らない限りは大丈夫だろう。
そしてマルスの知る限り不測の事態と言うのは思っている以上に早くやって来る。
その時のためにもマルスは早く6人目と接触しないといけないのだが、そうするためには人目を避けないといけない。
マルスはできれば早くに円卓の間へと降りていきたかったのだが、奇襲の後は、アルトたち三人が傍にいてずっと人の目があったこと、周囲を警戒しなければならないこともあり結局夜まで待つことになった。
「やっと降りて来たかと思えば、なんだこれは」
「お前がゾンビなんかがうろついているような場所に黒を連れていくからだろうが……陰気臭い奴が出てきやがった」
円卓の間は豪華絢爛……という訳ではなかったが塵一つないそれぞれの色に染められた綺麗な部屋だったはずだ。
それが今や天井に蜘蛛の巣がはり、円卓や椅子には灰色の埃が降り積もっている。
まるで円卓の間が数百年ほど放置されたかのようだ。
それぞれ、積極的に掃除する者、最低限周囲だけ払う者、まったく気にしない者と色々のようだ。
ちなみに闇は以外にも必死に掃除をしているタイプだった。
「掃除中悪いな、新しい奴についておしえてほしいんだが」
「その前に、マルスのお兄ちゃん、はい!」
いつも通り机に座り込み話を聞こうとしたマルスに、緑が何かを投げつけてくる。
咄嗟にマルスが受け取ったそれは、所謂羽箒だ。
「お話聞きたいならお掃除手伝ってね? ほら黒のお姉ちゃんの場所は緑たちじゃ掃除できないから」
彼女達はなぜか自分たちの色の領域から出ることができない。
つまりマルスが下りてきている時に、眠っている黒こと木乃美の領域を掃除する人間が誰もいないのだ。
マルスを除いて。
「……この無駄に広い場所を掃除しろと?」
「話が聞きたいならね」
木乃美の領域は主人格なだけありかなり広い、円卓の大体5分の一くらいの大きさがある。
「……昼間何もできなかったツケがきたな」
小さな箒を見つめてマルスは大きなため息をついた。
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