15歩目「後始末」
『Side ラドリオ』
危険を乗り切ったはずなのに乗り切った気がしない。
ラドリオは冷や汗をかきながら銃を片付ける。
少しでも敵意のないことを見せないとどうなるかわからないからだ。
木乃美の新しい人格が暴れまわって周囲の不死者は駆逐され安全になったはずなのだが、周囲には先ほど以上の緊張に包まれている。
得体の知れなさでは不死者と同列どころかそれ以上だからな、しょうがない。
当の本人はあっさりと気絶して木乃美の姿に戻っているし、マルスは弁は立つが口が悪い。
「いやぁ、今回も出たかぁ……さすがはアンデットキラー」
なるべく明るい口調と大きな声で周囲の注目を集める。
このまま黙っていると抜き身の武器を構えたままの連中が向かってきそうだったからな。
「おい、ありゃいったいなんだ?」
「詳しくは知らないが、彼女の英雄としての能力だ。原理はよくわからないんだけどな、不死者相手にはこの通り無敵なんだよ。便利だろ?」
こういう時、英雄であるということは便利だ。
英雄の能力の中には不可解なものが多数存在するから、言い訳には都合がいい。
そして能力について親しくもないのに根掘り葉掘り聞いてくるのはマナー違反だ。
それがわかっているのか殆どの人間が武器を収めてくれた。
武器を収めていないのは恐らく英雄ではない傭兵、そしてピアと呼ばれている少女だ。
「英雄だからと言われても納得できるもんか」
「まあまあ、不可解に見えるかもしれないが俺たちに害はないみたいじゃないか」
「それもそうだけどよ」
その傭兵連中も仲間内に宥められて武器を収めてくれた。
併せてピアも武器を収める。
どうにかなんたとほっと一息つく。
こんなに冷や汗をかいたのは竜の群れが癇癪を起して暴れるのを収めた時以来だ。
危険度としてはそんなに変わらなかったかもしれないな。
「……ラドリオさん、少しよろしいですか?」
木乃美たちと合流しようとした瞬間ラドリオは腕を捕まれる。
「ピアちゃんだっけ……俺に何か?」
腕をつかむ少女の瞳は、さっき武器を構えていた時の剣呑としたモノと変わらない。
どうやら周囲の空気を読んで武器を収めてくれただけで彼女は納得していないらしい。
「さっきのなんですけれど」
「だから言ったでしょ、英雄の能力で―――」
「……私、魔法使いですけれど僧侶でもあるんです」
つまり僧侶としての能力が、木乃美の新しい人格から何かを感じ取ったということだろうか。
「……何か感じたの?」
「あの能力は……」
周囲を確認して誰も自分たちの話を聞いていないことを確認してからピアは続きの言葉を紡ぐ。
「……不死者たちと同質の力です」
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