13歩目「小さな少女に見えたナニか」
あいつだ、木乃美が悲鳴を上げながら……いや半狂乱になりながら蹲っている。
戦闘慣れしていないとか、動く死体が苦手とかそういうレベルではない。
一体どんな恐怖を感じればあんな状態になるのか想像もつかない。
周囲の人間、私たちを含めてどうすればいいのか分からなくなり唖然とした表情で彼女を見つめていた。
戦いながらではあるけれども、馬頭を浴びせるでもなく心配して声をかけるでもなく。
唯一金髪の男の子だけが彼女を必死になだめようとしてた。
「落ち着け、深呼吸だ! こんな注目された状態で出すんじゃないぞ!」
確かにこんな所で粗相なり王都なりされても困る。
だが彼が心配しているのはそんなことではない様に見えた。
周囲を不死者の動く死体に囲まれている状況の中、周囲の人間の視線はそこに集まっていたように思う。
その後の光景を私は上手く表現できない。
無理矢理表現しようとおもうならが、灰色のカーテンが一瞬だけ目の前を通り過ぎたというべきかな?
木乃美のいた場所に別の何かがいた。
この雪景色の中白いワンピース一枚で、髪はボサボサのロングヘア、年齢は金髪の男の子、マルス君と同じか少し下くらいにみえた。
腕にはぼろぼろの薄汚れたクマのぬいぐるみを持って静かにたたずんでいる。
ボサボサの前髪のせいで表情は見えない。
「ひっ」
目が合った、目どころか表情すら見えないけ確かに私はそう感じた。
ゾワゾワと得体の知れない寒気が全身を駆け巡っていく。
「フォルテちゃん!」
「え?」
私は長い間それをみて固まっていたらしい、自分では一瞬だと思ったのに。
気づけば数体のゾンビに周囲を囲まれていた、一対一ならどうにかなる相手でもこの人数は私には厳しい。
じりじりと距離を詰めているゾンビを見ながらも私の視線の端ではそれを捕らえ続けていた。
それは小さな腕を振り上げる、白い、病的なほど白い肌だ。
そこから半透明の何かが立ち上っていく、それは腕の先にで巨大な半透明の腕を作り出した。
本能的にそれは生き物ではないと感じた。
その巨大な手が私たちに向かって横に振り抜かれる。
「ピア!」
「ひっ」
思わず私たちはお互いを体を抱きしめて体を小さくする。
衝撃に備えて二人ともしっかりと目を瞑った。
何かが高速で通り過ぎる感触と冷気が体を撫でていく感触、そして何かが砕ける音が響く。
何時まで経ってもやってこない衝撃に私は薄目を開けて周囲を見渡した。
先ほどまで周囲にいた腐乱死体がどこにもない。
断続的に肉に石をぶつけたような音が響き、ゾンビが宙を舞う。
その光景を作り出しているのは間違いなく小さな少女に見えたナニかの仕業だった。
本日二本目です。
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