11歩目「行軍」
急ぐたびになわけだが、今はマルスたちは徒歩で北へとも買っていた。
ここから先には馬車で進めないほどの悪路であり、マルスは膝まで雪に沈みながら四苦八苦しつつ先へと進んでいた。
「こんなことなら……もう少し……軽い服に……するんだった」
傭兵たちにはわずかだが前金が支払われた。
報酬は歩合制の後払いでこれは準備金のようなものだ。
このお金で武器や防具を整備したり、食糧などを買い込んだりするのだろう。
マルスたちはそのすべてを防寒具へとつぎ込んでいた。
周囲からは苦笑いと言うか可哀想なものを見る目で見られたし、街ではそれらは割高というか足元を見られて高かったが、それが最善だったとマルスたちは考えている。
まず彼らの武器と防具であるが。
武器と言えるものはラドリオの単発式銃とマルスの金槌くらいだ。
剣などのように鍛冶屋の世話になる必要はない、整備道具もラドリオが一通り持っているので補充するべきは火薬や紙などの消耗品程度だ。
マルスの金槌はそもそも魔王の武器である、整備が必要になったことはないしその辺の鍛冶師に頼める仕事でもない。
防具に関しては誰一人装備していないので整備の必要はない。
そして新しく購入するには準備金では足りなかったのでそのままだ。
食料も事前に買い込んであり、新しく買い込む必要はなかったので買う物が防寒具程度しかなかったともいえる。
現在のマルスはもこもこした毛皮を、派手なオレンジ色の布で覆われたコートに同色のブーツとフワフワの耳当てが付いた帽子をかぶっていてオレンジ色の珍獣のようになっている。
なんでも動物と間違われないための色なのだそうだ。
木乃美は似たような組み合わせだが、水色。
ラドリオは黄色である。
観光客や普段使いなら兎も角傭兵が着込むような服ではない。
幸いアルトは気にしていないらしいが、フォルテの方からは訝し気な視線を向けられており、ピアの方も気になるのかなんどもチラチラとこちらの様子を窺ってくる。
明らかに周囲からも侮られているというか浮いていることに気付いた時は一瞬だけ脱ぐかどうか迷ったマルスではあったが、寒いので気にしないことにした。
「その腕輪を侮る訳じゃないんだが……お前たち本当に戦う気はあるのか?」
小休止の際、木乃美と両手で温かいお茶を飲んでいたらついに突っ込まれた。
「勿論、武勲を上げないといけない理由があってな」
「それにしたって……武器らしい武器は坊主の腰の金槌くらいで、木乃美に至っては丸腰だ。とてもじゃないが戦えそうにない」
非難するような口調ではあるが当然だろう、向こうだって命がかかっている。
「安心しろ、いざとなったらあいつは頼りになるぞ?」
「……足手まといになるようならば置いておくからね。そろそろ敵国の領域に入るんだから」
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