9歩目「旅は道連れ世は情け」
『Side ラドリオ』
「へえ、コノミちゃん。変わったお名前だね」
「そりゃ世界が違うんだ、名前の定義だって変わってくるさ。私は名前よりも黒髪が気になるな、瞳も黒いのか」
「うん、私の世界……というより私の地域ではよくある色だったよ」
女性たちはガールズトーク、というよりも異世界トークを楽しんでいるようだ。
マルスの方は毛布にくるまってたき火に当たったまま不機嫌そうにしている。
マルスに限って火に近づきすぎて毛布を焦がすなんてことはないだろうが、雪国に入ってからのポンコツっぷりをみるとないとは言い切れないので目が離せない。
「竜騎兵とは珍しいな、俺は初めて出会ったぞ」
「世界は広い、いや世界は多いからな。俺みたいなのが普通な世界もあるのさ」
木乃美が女性陣を相手にしていて、マルスが使い物にならないとなれば当然アルトという青年の相手はラドリオがすることになる。
ラドリオから見て、アルトと言う青年は歴戦の戦士のようでもありまた純粋な少年のようでもあった。
そしてどうやら戦闘狂の気があるらしい。
「竜騎兵とはやはり強いのか? ここはぜひ一度手合わせを」
「いやいや近接戦は滅法苦手でね」
先ほどから幾度となく手合わせを申し込まれている。
これが木乃美やマルスの、腕輪の称号を知られた日にはどうなることやら。
話をそらすためラドリオはドラゴンホースに話題を持っていくことにする。
少なくとも彼の情報網ではこのような生き物がいるという情報はなかったし、個人的にも馬のような竜のようなこの生き物に興味があったのだ。
「こいつ、ドラゴンホースだっけか……俺は初めて見たんだが」
「うむ、俺が元々いた世界から連れてきたんだ。竜の国でも珍しい……いやこの世界に一頭だけの貴重な生き物だ」
「触ってみても?」
「……気性が荒いからあまりお勧めはしないが……」
珍しく言いよどむアルト青年を無視してラドリオはドラゴンホースに近づいていく。
向こうは大人しく草を食んでいたのだが、ラドリオが近づいてくる気配を感じて警戒したように顔を上げて
「ぐるる」
と小さく威嚇した。
「そう警戒しなさんな、俺はお前の敵じゃない」
話しかけながらゆっくりと近づいていくラドリオ、時折止まったり、手をヒラヒラしさせたり横から見ているとふざけているようにも見えた。
「……ほう、竜騎兵の実力は本物かぁ」
アルト青年がポツリとつぶやくがそれも無視。
いま目を離すと大変なことになるからだ。
ようやく手の届く位置まで近づきラドリオが体を軽く撫でると、ドラゴンホースはまた草をはみ始めた。
「初対面でここまで心を許すとは、少し嫉妬してしまうな」
「良い子じゃないか、少し臆病ではあるけどな」
「そこまでわかるのか」
なんだかんだ言いつつもマルス以外は彼らと打ち解けつつあった。
いつもお読みいただきありがとうございます。




