7歩目「竜を看取るもの(本物)」
「はっはっはそうかそうか、君たちもドラゴニア所属の英雄か」
「……ええ、一応」
声がデカいという言葉をマルスは必死で飲み込む。
礼を言って終わりかと思いきや
「危険とまではいわないがこの辺りは気象の荒い連中が多い、良ければ拠点まで送ろう。なに遠慮はいらない」
などと言って青年は楽し気についてくる。
青年の名前はアルト、ドラゴニア、竜の国所属の英雄で腕輪の色は金色だ。
マルスも忘れかけていた話だが、マルスも付けている金色の腕輪は、ドラゴニアに所属する英雄の証で金色は『竜を看取るもの』の証だ。
つまりこの青年はドラゴンを殺す手立てを持っている英雄と言うわけだ。
マルスの偽物の腕輪とは違い彼方は本物の腕輪のようだ。
つまり竜に認められた竜殺しの才能を持つ英雄と言うことになる。
今はにこやかに会話しているし、ラドリオの言を思い出せば
「竜以外には腕輪の真贋を見分けることは出来ない」
らしいのだが、相手の能力如何ではこちらが偽物だとばれる可能性もある。
さらにこちらが王国のお尋ね者だということが、もっといえばマルスが魔王の称号をもつ存在だと分かればどういう態度に出るのか分からない。
そして何よりテンションがマルスには合わない。
なので何とかして穏便に別れようとしているのだが、何を気に入ったのかアルトは一向にマルスたちから離れようとしないのだ。
「でもお兄さんの」
「アルトと呼んでくれ」
「アルトさんにも向かうところがあるでしょうし」
「特にない、食糧の買い出しをして馬車の元に帰るところだ」
「遠回りになっても悪いですし」
「問題ない、俺たちの馬車の方向もこちらだ」
「それではこの辺で」
「何かあっては不味い、最後まで送らせてくれ……いやむしろ俺たちの所に来るか?」
ワザとやっているのかと言いたくなるような粘りっぷりである。
しかも相手の顔色などを見る限り完全に善意のようだ、つまり完全に善意の塊で出来た好青年なのか、マルスでも覚れないほどの悪党かどちらかだ。
結局早い所馬車に戻って別れるのが一番いい、そう思ってマルスは少し足を速めた。
「お二人は銀色か」
「え、はい」
「お嬢さんも銀色とは……当てて見せよう、うーん。『竜を癒す者』ではないか?」
「えっと……(ちらり)違いますね」
マルスが離れたためアルトは話す相手も木乃美に変えたようだ。
相変わらず腹芸が苦手らしく、助けを求める様にマルスに視線を送ってくる。
ラドリオは早々に警戒と言う名の言い訳をして一歩下がっているため、木乃美を助けることができるのはマルスしかいないのだが。
「(すまんな)」
マルスとしても苦手なタイプなのでアルトのことは木乃美に押し付けることにした。
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また寝過ごしたので今日は二つ更新です。




