5歩目「ありがちな傭兵」
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マルスの愚痴を背後にしながら馬車に揺られること三日、冷たい保存食に苦労しながら進むと不死者の国に接する北の街の一つに到着した。
ウェストモニカからほぼ北上した位置にあり、聖都からは西北西の位置、帝都からはちょうど北東の位置にある。
手足も凍るコールドハンド、それがこの街の名前だ。
ちなみに不死者との国境沿いにある街は聖都とここ、そして帝都は北のある街の三つである。
聖都からは教会騎士団第一~第三騎士団が、帝都の北からは帝都の派遣軍が、そしてこの街からは傭兵の混成部隊が出撃する予定であった。
はっきり言って期待されていない。
賑やかしと寄せ集めと肉癖と捨て駒の中間的存在だと寒さに震えるマルスが言っていた。
実際見てみたラドリオの感想としては
「……確かにな」
の一言だ。
一獲千金を夢見て来たであろう少年と一部少女が三割、外見だけを考えればラドリオ達もこの組に見えるだろう。
ピカピカの装備に身を包み、さらに周囲を屈強な人間に守らせている所謂『貴族とその護衛』が三割、当人は勿論のこと戦いで役に立つのか分からない連中も多い
毛皮を多用した衣装や錆びた剣、はっきり言って身ぎれいではない風体、どう見ても盗賊や山賊といった風貌の人間が三割そのうち何人かは恐らく普段は本物の賊の類だ。
後の一割は旅慣れた剣士やら魔法使いやら、真面な部類の傭兵だろう。
彼らに加えて、彼ら目当ての商売人たちが同数くらいいて、活気だけはある街となっていた。
「……まずは温かい食べ物だ、後毛布の追加だな」
「街についたら宿に泊まるんじゃないの?」
「これだけ人がいるんだ、小さな街の宿がまだ部屋が残っているわけないだろうがクソが」
「馬車があって正解だったな」
ついでに言えば機械の馬であるジェニファーは飼料や水が不要だ。
三人は一先ず街の外に馬車を止めて、そのあたりにいた子供に小銭を持たせて馬車の番を頼む。
通りは多くの屋台や露店で賑わっている。
もっとも売り物は戦争に役に立ちそうなものに限定されてはいるが。
「おい、兄ちゃん。そこの姉ちゃんはいくらだぁ?」
だみ声と共に突然ラドリオが肩を掴まれる。
赤ら顔の山賊にしか見えない男が焦点の合っていない目でラドリオ達を見ていた。
「あー悪いな、そういう商売じゃないんだ」
「あ? そんなわけないだろう? 余所者風の優男と子供と別嬪の姉ちゃんが武器も持たずに歩いているんだ、じゃなきゃ何をしに来ているんだ?」
男、いやオッサンが声を上げて笑う。
周囲の人々は面倒事を避けようとする人間が半分、面白半分で見ている奴が半分と言った雰囲気だ。
「……そこまで観察できる理性が残っているなら声をかけるな空気をよめ酔っぱらいが」
普段ならばもっと機転のきいた返しができるのだろうが、寒さでイライラしているマルスがこれを一蹴した。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次は戦闘かもです。




