三歩目「信頼と商売の街」
のちにモニカをしのんで街の名前は「ウェイトモニカ」となった。
そして街の人々は語り継いだという。
伝説にのっとり人の信頼を裏切ることなかれと。
……
つまるところ、ラドリオの言った意味は
「誰かの信頼を裏切った覚えはないんだがな」
と言うことである。
酒をおごられた親父さんは派手な音を立ててラドリオの背中を叩きながら笑う。
「まあ兄ちゃんが本当に女性に誠実かどうかは知らないが」
「おい」
「帝都に入れなくなったのは兄ちゃん自身の責任じゃねえよ。知っているかい? 聖都の事件のこと」
「……どの話を言っているのか分からないな」
痛む背中を我慢しつつラドリオは話を合わせる。
下手に自分から
「疫病のことか? それとも不死者侵入? ああ、領主が逮捕されたやつだな!」
などとは言わない。
向こうも東から来た自分たちから情報収集をしているのだ。
下手に情報をばらまくのは得策ではない。
「ああ、ほれ疫病の話さ」
「今は沈静化したって俺は聞いたけどな?」
事実であるしこの情報はむしろ拡散してくれないと困る。
「らしいな……ただそのせいで帝都は検疫と入場制限を強化したそうだ。今帝都を出入りできるのは、元々帝都に住んでいる人間と各地方の領主や貴族、教会騎士団の上位連中と認可された奴だけだそうだ」
「認可された奴と言うのは?」
「……そろそろ酒が切れちまったなぁ」
ワザとらしくコップを逆さまにする親父に苦笑しつつ、ラドリオは追加オーダーを頼む。
勿論ラドリオの奢りだ。
この情報は聞いておかないと困る。
帝都の住民管理は完ぺきだ。
ラドリオには理解できない『機械』によって年齢や人相や経歴などが保存されているらしく、どこかの竜の国のように腕輪一つくっつけて関係者ですなんてごまかしは効かないのだ。
帝都に入ろうと思ったら問題の認可を得る必要がある。
「悪いな兄ちゃん、催促したみたいで」
「みたいじゃなくて露骨に催促したろ?」
「あはは、違いねえ」
ぐびぐびと美味しそうに酒を飲む親父に対してラドリオは苦笑する。
「一つは金だな、寄付って形を取っちゃいるが……ああ、幾らなんて聞くなよ? 俺でも払えないくらいだと思ってくれ」
見た目は完全に飲んだくれ親父だがラドリオの見た所服や装飾品の質がいい。
それなりに裕福な商人でも払えないとなるとラドリオ達には致命的だ。
「あとは帝都で奴隷になるって方法がある。まあオススメはしないがな」
帝都は通り抜けるだけなので、余計なしがらみができるのは遠慮したい。
「後はまあ、傭兵として働いて武勲を建ててればいいらしい。兄ちゃんが目指すならこれが一番マシだろうな」
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