二歩目「続・ウェイトモニカの伝説」
本日二つ目です。
季節が一周する頃には周囲の人々も彼女を説得するのを諦めた。
季節が三周もする頃には彼女の姿は街ですっかり名物となっていた。
彼女は知らなかった。
彼が行きついた先の街で小競り合いに巻き込まれて重傷を負い、とある街の娘に看病されていたことを。
彼はすっかりその娘に心を奪われてしまい、モニカのことをすっかり忘れてしまったことも。
そしてその地に落ち着きその娘と結婚したことも。
五年目の雪の降るある朝、小さな悲鳴が街の中に響き渡った。
声を上げたのはモニカの店の下働きの娘。
モニカは彼女の店の前で冷たくなって倒れていたのだ。
周囲の人々の応急処置も時は既に遅く、彼女は天に召されていた。
彼女は街の人々に好かれていたため多くの人々が彼女の死を悼んだ。
そして数十年後のことである。
東の国々の殆どを巻き込む戦争が起こった。
それは軍だけではなくそこに住む人々すべてを巻き込むような戦争、戦いの気配に気づいた僅かな人々だけが大事なものをかき集めて西へと逃げ出した。
街にも多くの難民が押し寄せた、多くが、元々街の西周辺に住んでいて戦いが始まって命からがら逃げてきた人々で、戦争の気配を察知して逃げてきた人々は少数であった。
かの男の姿もそこにあった。
すっかり年老いた彼は、長年連れ添った奥さんと長男夫婦と長女夫婦、そして数人の孫たちを連れてこの街へと避難してきた。
彼には当てがあった、商人としてギルドに登録する際本拠地はこの街の名になっている。
これはいままで場所を変えたことはないし、それまでギルドに対して登録料を払っている。
きっと優先的に街へと入れてくれるだろうと思っていたのである。
多くの難民たちは未だ街に入ることができず、街の外に仮住まいを建てている状態で街に入れる人間は少なかった。
彼は門を守る兵に名前を告げて、街に入れてくれるように頼んだ。
すると彼は手元の名簿に目を走らせてからこういった
「いや、お前は知らない」
そんなはずはない、確認してくれと食い下がる男に対して兵士は無表情のままこう言い返したという。
「モニカが待っているのは独身の男だ、お前ではない」
男は驚いて尻餅をついた。
モニカが既に亡くなっているのは知っていたし、それは何十年も前だ。
目の前の兵士は精々20くらいにしか見えない、モニカのことを知っている訳はないのだ。
不思議なことは続いた。
彼の家族がその後誰に声をかけても、人々は答えたという。
「モニカが待っているのは独身の男だ、お前ではない」
「モニカが待っているのは独身の男だ、お前ではない」
「モニカが待っているのは独身の男だ、お前だはない」
結局男たちの一家はこの街を離れてどこかへ行ってしまったという。
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