92歩目「反省会(円卓編)」
『Side マルス』
目の前でテーブルマナーに対する冒涜が行われていた。
マルスからすればそうとしか思えない光景だ。
「はぐ……むぐむぐ……んっ」
移動する馬車の中で破片が零れたり服が汚れることもいとわずに手掴みでジャンクフードを食べまくるその姿は正直戦っている姿よりも驚きの光景だ。
「お、おい……嬢ちゃん?」
「っふぁひ?」
「いや、お水のお代わりいる?」
御者台から恐る恐ると言った様子で差し出された水入り水筒をひったくるように受け取り一気に飲み干すと木乃美は再び先ほどと同じ勢いで料理を片付け始めた。
冷めたジャンクフードだ、味はそれほど良くはないが足りなくなった血を補うにはいいかと思ったのだが、まさかこうなるとはマルスも思っていなかった。
木乃美が目を覚ましたのは十数ミニ前、聖都を脱出してから数時間経過した後だった。
「ん……マルス君」
「……大丈夫か? 無理せず寝ていろ」
「……食べるものある?」
「嫌と言うほどある……腹を壊すか心配しなければ数日は余裕だな」
「・・・・・食べてもいい?」
「好きにしろ」
確かに好きにしろと言ったがここまで食えとは言っていない。
既に普段彼女が食べる十食分は彼女の中に消えている。
最初は微笑ましく見ていたが、段々呆れてきて最終的には不安になってきた。
このままだとその細い腹が破裂するのではないかとハラハラしながら眺めていると、開墾できた屋台の食料の八割を食べ終えたあたりで
「ご馳走様でした」
両手を合わせるしぐさ、木乃美の世界と言うか国での祈りの姿勢? を取った後そのままばったりと倒れた。
「おい!」
危うくゴミの山に突っ込みそうになった木乃美を支えるマルス。
やはりあの食べ方にはどこか無理があったのかと心配しながら顔を覗き込むと、すやすやと寝息を立てていた。
「……なんだったんだ?」
「さあな」
・・・
『円卓』
彼女に何か起こったのか知るにはここが一番だろう。
マルスたちも遅い昼食を済ませ、街道にいくつかある小さな空き地、仮眠をとるためのスペースに身を寄せて一息ついた。
円卓の様子は変わらない、と思いきや席についている全員が青い顔をして倒れている。
マルスが現れても一瞥しただけで微動だにしない。
ここは彼女の心の中の世界だ、何かに攻撃された可能性はゼロに近い、近いが相手は至高天の英雄なにか特別な攻撃をしてきたのかもしれない。
「何があった」
「……今ちょっと話しかけないでくれる? 話すのも億劫で」
「そう言われてもな、簡潔でいい」
「どこぞの馬鹿のせいで全員瀕死なの」
いつもお読みいただきありがとうございます。
昨日上げ忘れたので、今日は二回投稿します。




