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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第三章「聖女であるか聖女になるか」
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88歩目「貴女のような人が嫌いです」

 「教えてあげるわよ! 聖女、いえ人を癒す者って言うのは」


 素早く踏み込んで相手の攻撃を掻い潜りながら顔面に一発たたきこむ、もう女性だからって容赦はしない。

「清く正しくを心がけ! 仕事に忠実に!」


 吹き飛ぶ体をそのまま追いかけて肋骨に守られていない腹の辺りごと地面に叩きつける。


「毒と害と体に悪い物を知り! それを人に勧めない!」


 そのまま胸の辺りにかかとを叩き込む、骨の砕ける感触が伝わってくるがそれでも私は手を止めない。


「力の限り、自身の仕事に臨み!」

 そのまま馬乗りになり顔面に向かってさらに打撃を浴びせる、この辺りからはもう技とかではない。

 純粋な力技。


「仕事中に知ってしまった人の病気や事情は外に漏らさない!」

 固い物を殴っている感触から段々と湿ったものを殴る感触へと変わっていく。

 音もまるで湿ったお肉を叩いているかのようね。


「そして何よりも人を助けるために! その! 身を! 捧げる!」


 大きく三度両手を組んでトドメと言わんばかりに叩きつけて私はその場を離れる。

 怒りのままに叩きつけはしたけれどこれは建前だ。

 本当はままならないことだってある。


 だけどままならないからと言って蔑ろにする目の前の女と一緒にはされたくなかった。

 「ふふっ」


 笑いながら相手の女が起き上がる、正直殺してしまったかと少し焦っていたけど。

 さっきので死なないのもどうかと思う。

 下手な不死者(アンデット)よりもタフ……いや上位でもここまでタフな奴はなかなかいない。


 先ほどの攻撃でより一層赤の割合が多くなった白い彼女は笑いながらゆっくりと起き上がる。

 見た目のダメージは回復したみたいだけど先ほどよりも動きが鈍い。

 

 実はダメージが通っていないんじゃないかって少し不安だったのよ。


「殊勝な心掛けですけれど……私は良いとは思いません」

 それはお前が偽善者だからだろうと言い返そうとした私は思わず声を詰まらせた。


 彼女は笑っていた、瞳以外はにこやかな笑顔で。


「その結果、人は感謝を忘れました。それがあって当然だと、お前はそれをして当然だと」


 確かにそうかもしれない、私はほんの少しだけそう思ってしまっていた。


「そうならない様に、せめてお礼の言葉だけでも欲することにどこがいけないのですか?」

 彼女は身構える、先ほど私が見せたのと同じ構えだ。


「私は貴女のような人が嫌いです。あるいは羨ましいのかもしれません、貴女の様に綺麗に生きていける人が」

 彼女の言い分はどこも間違っていないのかもいれない、だけども。


 彼女を認めてはいけないと私の中の何かが叫んでいた。

いつもお読みいただきありがとうございます。

聖女の台詞は「ナイチンゲール誓詞」を少し改良したものです。

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