84歩目「聖女の物語2」
そのころになると少女に対する教育方針も変わってきた。
有能なものが活躍出来ればそれだけ、一族としての価値も上がる。
少女に施される教育は、皆と同じ汎用的なものから彼女専用の専門的な物に変わって行った。
一つは戦闘訓練、今までは怪我で引退した者や若い者が仕事の合間に引き受けることが多かったが、彼女専属で優秀な者たちが回されるようになった。
中には若くして強い彼女の自身をへし折ってやろうなどという態度の者もいたが、彼女の真面目な態度とすば抜けた戦闘センスに感心し真面目に指導するようになった。
二つ目は女性を武器とする教育だ。
これは一族の中でも見た目麗しい者にしか施されない教育である。
群衆に溶け込む方法ではなく、目立つ容姿を有効活用させる方法、化粧の仕方や男の落とし方などを学ぶ。
教育は変わったが彼女の胸の内に秘めた将来の夢、医療班になるという思いは変わらなかった。
特別待遇なのを生かしてそちら方面の優秀な教師をつけてもらえたこともあり、彼女の腕はぐんぐん上達していった。
彼女が一五になる頃には、一族の手によって彼女は一つの完成形となった。
戦いの分野では既に一族で敵う者はなく、二番手三番手が束にかかっても敵わないほど。
教師たちの手によって磨かれた美貌は、どこぞの一国の姫と並んでもそん色のないほどだ。
そして医療の面においても他の追従を許さないほどの腕前となり、彼女は多くの人間に慕われる存在となった。
このころになると彼女にも仕事が回されるようになる。
彼女に回されるのは美貌を生かした情報収集と戦闘能力を生かした暗殺だ。
彼女は教育の成果を如何なく発揮していく。
時には老人さえ蕩けさすような最上位の娼婦のように、時には接吻さえ恥じらう可憐な乙女の様に、彼女の手にかかって情報を落とさない男はいなかった。
戦いとなれば素手にドレスというハンデを負いながらもフル装備の重装歩兵を軽々とあしらうほどの強さ。
彼女が一族一の腕前と評されるようになるのに時間がかからなかった。
ある時長老たちが彼女を呼びつけてこう聞いた。
「お主に教えることはもう何もない。これからはどこか専属の任務についてもらうと思う。希望を申せ」
「はい、私は医療班を希望いたします」
この言葉に長老たち、いや上層部の人間たちは大いに困惑した。
確かに彼女はその分野においても一流ではあるが、これほど優秀な存在をそこに縛るのは惜しい。
しかし彼女が望んだことであるのにそれを突っぱねるのはいかがなものか?
いやいや、まずは何処か別の所で修業を積みのちのちそこへ落ち着いてもらえばいいのではないか?
彼らの意見は割れに割れた、その間も彼女は更に功績の残していく。
彼女の希望はのらりくらいとはぐらかされたまま、更に三年の月日がたった。
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