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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第三章「聖女であるか聖女になるか」
208/327

83歩目「聖女の物語1」

『Side 聖女』


 彼女の生まれた世界は、魔法と言う物は一生に一度見れればいいという程度の希少価値のある、中世程度の世界のとある山村であった。


 山に住む人々は、作物を育て家畜を育て森で獲物を狩り川で魚を取って暮らしていた。

 彼らの伝統を守って。


 幼い彼女にはその伝統は知らされることはなかったが、彼女は常々疑問に思っていた。

 滅多に人の来ない山村で、行商人がくるのも月に一度程度、旅人などめったに来ない村ではあったが、不思議とひもじい思いをしたことはない。

 稀に村では見たこともないような高級な身なりの人間がやって来ることがある。

 彼らがやって来ると、村の若い者たちが『伝統』に従ってどこかに出かけていく。

 ある者は帰ってきてある者は帰ってこない。

 死者を悼む時期が過ぎると不思議と食卓は豪勢になった。


 他にも不思議なことはある。

 朝起きると毎日やる体操がある、遊ぶときは手足に重りをつけないといけない、村に伝わる遊びも不思議と体を激しく動かす者が多く、彼女は毎日クタクタになるまで遊びそして眠った。


 彼女の疑問が解けたのは年齢が五つになったころだった。


 彼女の一族は、時の支配者のために影で動く、所謂暗殺者、あるいは間者(スパイ)を育てる一族だったのだ。

 五つになると彼女にも本格的に訓練が施されることになる、一般教養の勉強から、地理や歴史、人体に関する勉強、そして戦闘訓練。


 幼い彼女はそこで才能を開花させた。


 彼女の年齢が二桁に届く頃、同年代の子供たちの中では一番の強さを誇るようになっていた。

 百年に一度の天才と呼ばれるほどの戦闘力の高さに皆は彼女の将来に期待した。


 さてこのころになると彼女も夢を持つようになる。

 一族の中で過ごす以上彼女の選択肢は他の少女に比べて限りなく狭い、それでも彼女のは一つ目指したいものがあった。


 医療部とそれは呼ばれていた。

 村の中で医療に長けた存在が付く職業で、修行で生傷を作る幼子たちや出先で戦う大人たちまで幅広く信頼されている存在だった。


「私大きくなったら医療部のお姉さんになりたい」

「そうなの? じゃあたくさん勉強しないとね」


 彼女は自主的に医療や人体についてさらに勉強をした。

 結果応急措置などの医療に関する実力も上がったのだが、皮肉なことにその戦闘力も大きく上がった。


 人の癒し方や構造を理解していればおのずとその壊し方も理解できる。

 彼女が12なり子供から少女に変わっていく頃には、同年代は愚か大人を相手にしても互角以上の戦いを見せるほどになっていた。

いつもお読みいただきありがとうございます。

しばらく聖女の物語編です。

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