82歩目「下位互換」
飛び込んできた聖女の一撃を白は大きく体をそらして交わす。
だがカウンター気味に白が叩き込もうとした一撃は聖女の反対の腕に受け止められ二人はほんの少し距離をとった。
「……お初にお目にかかるわ、偽聖女さん……戦闘スタイルまで一緒とはどれだけファンなのよ」
「あら? じゃあ殴りかかってきた貴女が本物の聖女様? そりゃ親衛隊も狂暴になりますわ」
聖女がファイティングポーズをとり、白もなんちゃってファイティングポーズをとる。
「なんでこんなことをした」
「それは貴女が一番わかっているのでは?」
お互い次の行動を読みあいながらゆっくりと部屋を回る。
マルスは完全に蚊帳の外だ。
「ふっ!」
「やぁ!」
聖女の言ったように二人の戦闘スタイルはほぼ同じといっていい。
徒手空拳、且つ避けるよりも受けることに重点を置いたスタイル。
はたから見れば女武闘家が軽い一撃を押収しているようにも見えるがはっきり言ってマルスは近づけなかった。
いなされた一撃が壁を粉砕し、受け止めた衝撃で床が割れる。
お互いの攻撃一発一発が巨大なハンマーの一撃に近い破壊力を持っているのだ。
「ったく……そんなところまで一緒とか……実は双子の妹だったりしない?」
「どうみても、人種が違います、わ!」
「俺にはさっぱりわからないんだが」
お互いの実力は全くの互角のように最初は見えたが徐々に白の方が押され始めた。
攻撃を受ける回数が多くなり、それによりさらに白の攻撃の手が緩む。
「おりゃあ!」
「ぐっ!」
聖女の重い一撃を受けて白がマルスのそばまで転がってきた。
すぐに立ち上がるが殴られたおなかのあたり抑えてふらふらしている。
マルスが白を支えてやると白は弱弱しい笑みを浮かべた。
「参りましたわね……こちらは完全に下位互換のようですわ」
「俺にも説明してくれ……何が負けているんだ?」
「強化率と回復率よ、ほんのわずかだけどね」
白の代わりに聖女が荒い息を整えて答える。
「あれだけお互いに重い攻撃を打ち合っているんだもの、回復は必須よ。そして私は回復魔法の応用で身体能力を上げて攻撃しているわ、そっちの偽物さんもね。
貴女がどういった方法で回復と強化をしているのかは分からないけど、その回復速度と強化率を私を下回っているの」
「なるほどな……それで、もう落ち着いたか?」
「別に、こっちも回復する時間を稼いでいるだけよ。いかなる理由であろうともおじ様を害した貴方達を許す気はないわ」
再び飛び掛かってくる聖女はこんどはマルスを狙っているようだった。
白が咄嗟に横から飛びつき、二人は部屋の外へと一塊になって飛び出していく。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回からしばらく、聖女過去編です。




