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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第三章「聖女であるか聖女になるか」
204/327

79歩目「堂々としていれば押し通れる」

・・・


『Side マルス』


 再びラドリオを置いて……ただし今度は待機ではなくいつでも町から出られるように準備するように言って……二人は再び教会内に入り込んでいた。

 当然もう一度見習い神父とシスターの格好をしてだ。


「なんとなくの場所は分かったが、そこまでどうやって行く?」

「途中までは私が何とかする」

 今回は案内のサビオリスがいない、連絡方法もないので二人だけで教会を進むしかない。

 万が一に備えてマルスはマッピング用の紙とペンを用意してきたのだが、マルスに書かせる暇も与えずに木乃美はマルスの手を引いて歩いていく。


「おい、帰れなくなっても知らないぞ?」

「最悪窓から飛べばいいよ」

「無茶を言うな」

 せめて印だけでもつけようとしているのだが、木乃美がまるで行き先がわかっているかのように躊躇なく曲がり角を曲がっていくためそれすらできない。


 何度も曲がり角を曲がり階段を上がり時には降りて、気づけばマルスも見覚えのある通路の近くまでやってきていた。

 サビオリスも案内中に一度だけここを通ったときに注意しろといった場所、上層階への通路だ。


「……よく道を覚えていたな」

「なんとなくだよ……それでその」

 褒められてはにかみ笑いをする木乃美が唐突に足を止める。

 通路の端に身を寄せて周囲を確認してから情けない声を出した。


「……ここからどうすればいいか考えてなかった」

「そんなことだろうと思った……もう少し考えて行動しろ」

 マルスは小さくため息をつくと、用意してきた封筒を木乃美にもたせ小さく耳打ちをした。


・・・


 上層階への通路、騎士が守っている場所をシスターと神父見習いがすたすたと通り過ぎていく。


「まて、どこへ行く」

「領主様に書類を届けにですが?」

 さも当然という風にマルスが答える、木乃美はこの手の芝居が手派なので微笑んで後ろに立っているだけだ。


「いつもの伝達係ではないな、誰からだ?」

「聖女様からでございます、ほら最近某司教様が罰せられた件でごたごたしておりますから、確認が遅れているのでしょう」

「そうか……念のため確認する」

「……至急の要件なのですが?」

「それでもだ」

 騎士の一人が小走りで通路を駆け下りていく。

 騎士から死角になっている位置で木乃美が心配そうに背中をつついてくるがマルスは無視をする。


「確認が取れるまで待つのは構いませんが? 騎士様はそれでよろしいのですか?」

「ん? 言っている意味がよくわからんが」

「聖女様からの緊急の要件です、時は一刻を争います。この確認の時間のせいでもしものことがあった場合、騎士様は責任をとれますか?」

「責任……」


 重要な警備の任務といえば聞こえがいいが、誰かが攻め込んでくる可能性など皆無の場所の警備など要は閑職だろうというのがマルスの推測だ。

 ならばそういう部署の人間はこういう単語に弱いはずだ。

「……反対にここでの決断が騎士様の栄達の第一歩になるかもしれませんし」

「……わかった、子供一人とシスター一人でテロなどありえないしな」


 さらにダメ押しの一言であっさりと騎士はここを通してしまった。

 もちろん確認を取りに行った騎士がかえってこればマルスの嘘はあっさりとばれてしまうはずだったのだが……時同じくして聖女が不在であったため、彼らが自分のミスに気付くのはすべてが終わった後であった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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