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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第三章「聖女であるか聖女になるか」
202/327

77歩目「剣聖は心配せず」

 気づけば合計200話突破、文字数31万字になっておりました。

 まだまだ拙い作品ではございますがお付き合いいただければ幸いです。

『Side 剣聖』


 同時刻、聖都から北に進み馬の足で数時間、不死者(アンデット)の国との国境付近。

 国境付近と言っても明確に線が引いてあるわけでもなくましてや関所がある訳でもない。

 なんとなくではあるが皆がここを境だと思っている場所だ。


 教会騎士団第一から第三部隊はここの陣地を形成し、いまは一部の見張りを残して殆どの兵士が狭いテントで身を縮めて眠っている。

 そんなテント群のなかで幾つか金のかかっているテントがあり、その男はテントの最奥で優雅に足を組んでいた。


「お茶が入りました」

「入り給え」


 地面にはフカフカの絨毯が敷き詰められ個人用の大きなベッドと仕事机と椅子、さらに専用の傍仕えまで持っているこの男こそが教会騎士団最高戦力の一人、至高天『剣聖』その人である。

 年齢はまだまだ若く20歳前後に見えるがあるいは40後半と言われても違和感はない、見た目の年齢以上の威厳と迫力に満ちている。

 白く輝く鎧……勿論よくよく身えば細かい傷が絶えない実戦の傷跡を残したその鎧は今は鎧かけにかけられ、白いシャツにズボンと言うラフな格好である。


「うむ……今日もいい味だ、ありがとう」

「いえ! とんでもありません」

 剣聖が女性が見ればとろけるような煌びやかな笑みを浮かべ、少年はどことなく興奮した様子で頭を下げる。

 少年も英雄の一人ではあるが、彼にとっても目の前の男は尊敬すべき憧れの人間だ。

 少年の能力は割り込み(インターセプト)意識さえすれば、どのような攻撃からでも守るべき対象との間に入ることのできる能力だ、能力としては優秀だが見た目14程度の細身の少年では宝の持ち腐れ。

 精々一回のみの盾にしかならないだろう、彼がそうならず長く傍仕えをしているのは単に剣聖が守る人用すらなく強いからである。

 剣技にしても能力にしてもだ。


「……」

「剣聖様、もしや聖女様が心配ですか?」

「ぶはっ!?」


 優雅に呑んでいたお茶を剣聖が噴き出した。

 優雅のかけらもない。

「どうした急に」

「なんだか物思いにふけっていたようでしたので」

「あの女のことを考えていたのは事実だが心配などしていないよ」

 剣聖の表情が苦々しげに歪む。

 彼にとって聖女は複雑な存在だ、彼女の存在は自分にとって唯一の例外だからである。


「しかし、聖都にお一人でもし強力な不死者(アンデット)が聖都に表れでもしたら」

「……問題ない、勘違いしているようだから教えてあげるけど。あの女は強いよ?アレックス」

「ふえ!?」

 アレックスと呼ばれた少年は子供らしい高い声を上げる。

 思わず手が伸びるのを我慢しながら剣聖は話を続ける。

「素手同士の戦いなら僕に勝ち目はない。武器アリの摸擬戦だとしても勝率は二割と言ったところか。勿論真剣ならば負ける気はしないがね」

 ちなみにこれは強がりであり、能力を最大限まで使ったとしても勝率は五割を切るとみている。


「あいつは強いよ、強いからこそ女でありながら私に触れることを許している……思い出したら気分が悪くなってきた、アレックス寝床の準備を」

「……あ、はい」

 驚き呆然としながら話を聞いていたアレックス少年だったが、主の言葉に我に返り慌ててベッドの支度に向かう。


 剣聖、その見た目の美しさと強さから女性がほっとかないと思いきや、当人は極度の女嫌いなのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 次回からクライマックス……かな?

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