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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第三章「聖女であるか聖女になるか」
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76歩目「聖女奔走」

 サビオリスが言った通りの場所に伝声管はあった。

 一回壊して軽く元に戻したみたいだけど近づいてみればバレバレだ。

 もしこの場所が人通りの多い道だったら一発でばれていたね。


「……聖女様?」

「もういいわ、仕事に戻りなさい」

 どこか後ろ髪惹かれる様子のサビオリスを強引に送り出すと、私は別の場所を回り出した。

 行くべきところは分かっている、でもまだ信じたくない自分が私の中にはいた。


・・・


 食堂や休憩室、その他いろいろな部署、自ら足で回っていろいろ聞いて回ってみた。

 当人は勿論のこと周囲にもばれてはいけない。

 こういう時は聖女と言う存在の人望の高さが有り難くなる。


 こちらがちょっと聞きたい話を振ってみれば、相手は喜んで情報を与えてくれる。

 ある者は純粋に好意から、ある者は下心満載で。

 そして集まっていく情報は……私の望まない物ばかりだ。


 曰く、最近領主様の外出が多い。

 曰く、昔から一人で集中して仕事をなさる方だが最近は特にその時間が長い。

 曰く、最近は夜の散歩に出かけるのをよく見かける、などなど。

 一つ一つは大したことのない他愛無い世間話、だけど疑いを持っている私からすればドンドン状況証拠が集まっていく。


「まだ……まだ決定的じゃない」


 現実逃避だとはわかっているのだけれど、つい呟いてしまう。

 自分に言い聞かせるように。


 あちらこちらをうろついている内にすっかり日が暮れて夜になってしまった。

 私は自分の部屋に戻って椅子に勢いよく倒れ込んだ


「あー……もう」


 疲労を訴える足に回復魔法をかけながら、手元の紙に状況証拠を箇条書きにしてく。

 別に書き出す意味はない、見せる訳じゃないから。

 ただの暇つぶし


 私は一つの情報を待っていた。

 例の入り込んだ不死者(アンデット)の人事を誰が操ったのか、その報告書が今晩来る予定なの。


「聖女様、今宜しいでしょうか?」

「忙しいんだけどなんのよう?」

「疲労回復効果のあるお茶をお持ちしました、いつものストレートでございます」


 これが合言葉、一言一句間違いないことを確認してから私は扉を開ける。

 音もなく静かに一人のシスターが部屋へと入ってきた、宣言撮りお茶の入ったティーポットとカップを持っている。

「こちらはお茶請けでございます」


 扉が閉まったことを確認してからシスターは懐から一通の封筒を取り出す。

 どこにしまっていたんだこの子。


「……人事は……領主様が?」

「はい、遠縁の子、茶飲み友達、熱心な信者、英雄、肩書は違えど全て領主様が……すみませn」

「謝らなくていいわ……後お茶はいらない」

 思わず勢いでコップを握りつぶしてしまい、シスターがおびえた表情を見せている。

 この分だと今私相当怖い顔をしているんだろう。


 怖い顔にもなろうもの、おじ様が内通者であることがこれでほぼ確定してしまったのだから。


 部屋の中に立ちすくむ情報収集係のシスターを置き去りにして私は速足でおじ様の部屋へと向かう。

 この段階に至ってもわたしはまだ、おじ様を説得しようとしていた。

 心の冷静な部分はそれは無意味だと言っているけどあえて黙殺する、それでも私は信じたかった、おじ様が本心から私たちを裏切るはずがないことを。


 足早にやってきたおじ様の部屋、ノックをしようとした瞬間、部屋の中で大きな音が響き渡った。


 何かを叩きつけたような音……咄嗟に私がドアを開けて中に飛び込む。


 そこにあったのは真っ白な服を着た女がおじ様を殴り飛ばしていた後の光景だった。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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