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身の上相談

「お帰りなさい……」

「ああ、すぐに出してくれ……」

「了解……」

 見るからに落ち込んだ様子で帰ってきた主に、護衛はかける声も見つからず、言われた通りに発進させる。

 物資運搬に特化している為、乗り心地があまり良くない輸送機を、傷心の立花の為に優しく運転して城へ向かう。



 この星では街の外の地上は危険な蟲が多すぎて命懸け、その為どの国でも整備された道路というのは街中にしかない。そこで基本的に移動や荷物の運搬には飛行機を使う。絶えず砂嵐や蟲に襲われるので、小回りが利く様に周囲の空気を集めて風を操作しながら飛ぶ仕組みだ。



 輸送機の自室に入った立花は項垂れながらノロノロと軍服とブーツを脱ぐとベッドに潜り込む。

 領地に戻る為に、数日前から睡眠時間を削っていた為体が重く、すぐにでも眠ってしまいたかったが、先ほどまで鬱金と話していた内容が思い出されて泣きたくなって来た。


「あんな事言わなければ良かった……」

 何故あんな事を言ってしまったのかと後悔と疑問が押し寄せる。スカウトに行って身の上相談してしまうなんて格好悪すぎる。もっと鬱金を褒めて、鬱金の話をするべきだった。


 ため息を重ねながら思い出すのは鬱金の凛々しい姿だ。二十歳になった今でも子狐ちゃんと言われるほど、体格も顔立ちも小ぶりな立花には羨ましい、男らしい顔立ちに体格、どんな表情でも思わず兄貴と呼びたくなる。


 私服で現れたときには思わず見とれて瞬きも出来なかった。

 もうあれが見れただけも、いや声が聞けただけでも良しとするしかない。思った以上に渋兄貴だった。

 笑った顔や、少し意地悪そうに見つめられる度に感動するほど嬉しかった。二度と会えないと思うと涙腺が崩壊しそうなほど寂しい。




「ファンですとか言えば良かったのかな……」

 などと思ったりするが、鬱金がファンと言われて喜ぶ所が浮かばない。


 むしろ、お前俺の事好きだな〜、よし! 仲間になるよ! と桐生の様な軽い感じだったら幻滅する。そんなの鬱金じゃない。


 そうすると鬱金の必要性を説明するには、やはり自分の弱みを見せるしかないわけで、あの話をして自分の領地の上がり全て使っていいと言う、交渉にあるまじき自己最高額から初めてしまった立花には、勝算は無かったのかもしれない。


 ウジウジともう戻れな過去を振り返り、後悔を繰り返すうちに立花は眠ってしまった。

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