ツンデレ馬鹿正直
その日の夜は送迎会らしく鬱金も飲み会に強制参加させられた。最初は虎杖や立花と飲んでいたのだが、鬱金が席を離れた隙に立花はマッチョなお兄様達に連れて行かれていた。仕方がないので鬱金は虎杖と向かい合う。
「レオモレアはどうだい?」
「まだ一ヶ月ですから、よく分かりませんよ」
「そうかい? 前に会った時より楽しそうだけど?」
「それは、そうかも知れませんね。好き勝手させてもらえるので」
「ふ〜ん」
虎杖は不満そうだ。
その後も虎杖の勧誘を交わしながら話していたが、立花が気になった鬱金は立花を探しに行くと、お兄様達に囲まれた立花はクッションを抱えて震えている。
だいぶ酒が回っているのか涙目でぴるぴる震えている立花はどう見ても小動物だった。
「うこん……」
鬱金は無言で立花を回収して席に戻るが虎杖が不機嫌な様子だ。
「立花様、こっちで一緒に飲みましょう?」
虎杖にも怯えている立花は一番無害そうな鷲尾について行ってしまう。
「あ……」
鬱金は何か言いたそうにしていたが虎杖に邪魔されてしまった。
「災難でしたねえ。大丈夫ですか?」
「はい……」
「立花様はこういうの苦手ですか?」
「はい……」
「でも外国に行くとこういうの多いでしょう?」
「俺は外交は担当外なんで、こういうの初めてです」
「そうですか。それは大変でしたねれ
「はい……」
立花は苦労を分かってくれる人がいて嬉しい。そして鷲尾の勧めで立花は大分飲まされていた。
數十分後、ベロベロに酔っ払っていた。
「立花様はご苦労されてるんですね〜」
「そうなんれしゅ。頑張って時間作ったのに全然暇にならないんれしゅ」
「出来る人ほど仕事がくるものですよ」
「でも、知らない人にはあんまり会いたくないんれしゅ」
立花は呂律が怪しいまま鷲尾に愚痴っていると言うか、喋らされている。
実は鷲尾は十分話すだけで情報が抜かれると、隣国では危険視されていた人物で、立花から愚痴を聞き出すなど朝飯前だ。
鬱金が虎杖から逃れてきた頃にはこの状態だったのでかなりの情報を抜かれていた事だろう。鬱金はベロベロの立花を連れてさっさと部屋に戻った。
翌日、帰り支度をしていた立花一行の前に虎杖が現れた。
「お土産があるからついておいで」
立花が警戒しながら虎杖について行くとそこは駐機場だった。ほとんど使われていなそうなドックの灯りをつけると、そこには大きな乗り物があった。
「ロストシップ……」
立花はうわ言のように呟く。
ロストシップは人類がこの星にやってきた時に使っていた宇宙船の事だ。現在では失われた技術が多く、何百年も前の骨董品ではあるが貴重な物だ。
「いらないからあげる」
「ええっ!」
立花は驚き、警戒している。
「何代も前からそのままだから、粗大ゴミなんだよ。引き取ってくれると嬉しい」
「いいんですか?」
「ああ、でも動かす事も出来ないからそこら辺は自分でやってね?」
「見て見てもいいですか?」
「好きにしなよ」
「はいっ!」
立花は見た事もないほど嬉しそうに走って行く。
「正直だねぇ」
虎杖は少し呆れた様子だ。
「目が輝いてますねぇ」
鷲尾は嬉しそうにしている。
「バカ正直なもんで……」
護衛はため息とともに呟く。
ツンデレ馬鹿正直、そんな言葉が鬱金の頭に浮かんだ。
その日の夕方、立花一行は貰い物のロストシップを牽引しながら国に帰って行ったのだった。




