恐怖の晩餐会
夕食は晩餐会が開かれるらしいのだが鬱金が頑なに同行を嫌がったので立花は他の護衛二人と会場に向かったが、そこは劇場だった。
場所を間違えたのかと思ったが、晩餐は劇を見ながらになるらしい。ディナーショーと言った趣向だろうか。
とりあえず立花は用意されていた席に着いたが、何故が護衛とは離れた二人分のテーブルだった。
立花が不安そうに護衛を振り返ると彼らは彼らで見慣れない場所に戸惑っていた。
立花は食前酒を飲みながら周囲を見回す。
品のいい装飾のされた劇場ではオーケストラが演奏の準備をしている。立花が興味深く見ていると、虎杖が颯爽と現れ、食事が運ばれてきた。
「おや、変わった服を着てるね?」
「これは、最近うちの国で作られたばかりの生地で作っているんです。少しお持ちしていますので、お気に召しましたらまたお持ちします」
立花が今着ているのはグレーのストライプのスーツなのだが、光の加減でグ白く光って見える華やかなものだ。
虎杖は少し真剣にスーツを眺めると花が咲くように笑う。たくさん持ってこいということだろう。気に入って貰えたようで立花も一安心だ。
「今日は歌劇だから、立花は見たことある?」
「いいえ。初めてです」
「そう? 気に入ってくれるといいけど」
虎杖は全く心配していなそうな顔で食事を始める。
しばらくすると歌が聞こえて来て舞台の幕が開いた。
立花にも歌が素晴らしいのはよくわかった。一糸乱れぬ踊りも美しいが、舞台の上は男ばかりで、しかも上半身裸に白タイツで立花は踊りの方はあまり見ていられなかった。
その代わりに目の前の食事に集中する。
見たことのない料理ばかりで食べ方に戸惑っている立花の横では虎杖が舞台を見ながら器用に食事を進めている。
歌劇の内容は戦争の話らしく、大勢の男たちが勇ましく歌い踊り、一番の盛り上がりが終わると休憩になった。
「立花見てた?」
「いえ、初めて見る料理で……でも歌は聴いてました。素晴らしいです」
「そう」
聞いておいて虎杖は興味がないらしく会話が終わってしまう。
「こういった劇はよくご覧になっているのですか?」
「うん。専属の劇団とオーケストラがいるしね。でもお客がいるから今日は張り切ってるよ」
「そうなんですか……」
文化が違い過ぎて立花に会話には広げることが出来そうもなかった。
▽▲▽
その頃鬱金は鷲尾と一緒に街のレストランで食事をしていた。数時間振りの女性の姿に心が洗われるようだ。
「立花様と一緒にいなくて大丈夫なんですか?」
鷲尾が黙々と食事をしながらいう。
「あの晩餐会は一度見たら十分です。他にも護衛がいますし立花様は大丈夫ですよ」
「まぁ、虎杖様はそうでもないと思いますが、他の連中はどうでしょう……」
「えっ?」
虎杖はハードな趣向の人だ。立花には興味がないだろう。しかし虎杖の取り巻きは違う。虎杖が彫刻のような完全無欠の美人なら、立花は癒し系で美形揃いの城では珍しいタイプだろう。
イカツイお兄様たちに囲まれて震えている立花が目に浮かぶ気がする。
「フフっ、少し早めに戻りましょうか?」
「そう……ですね。大丈夫ですよね?」
不安になった鬱金が鷲尾に尋ねる。
「危ないことはないと思いますが、怖い思いはしてるかも知れませんねぇ……立花様はお可愛らしいですし」
鷲尾も遠い目をしている。
「鷲尾さんは良く平気ですね……」
「まぁ、慣れますよ。子供の頃からですし……」
鷲尾と虎杖は乳母兄弟らしく、産まれた頃から虎杖を知っているそうで今までに色々あったらしい。




