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北の大国シュラバナ

BLではありませんが、ハードな方が登場します。

 鬱金が立花の元での初仕事、軍の隊員スカウトの旅から帰ると立花が北の大国シュラバナ王に会いに出かけるという。


「鬱金は戦神いくさがみのこと知ってるのか?」

「えっ? ええ、まあ、隣国でしたし……」

「そっかぁ……。何で俺が行かなきゃなんだろう?」

 立花は困惑している様だったが、鬱金にはなんとなく想像がついた。そして立花だけを行かせるのは心配だったので結局付いて行くことになった。




  ▽▲▽




 北の大国シュラバナ。

 ここの王は大陸最強と言われる戦の天才である。

 また、この国は古くから芸術と音楽で有名で、芸術の都とも言われる。

 寒冷地特有の硬く丈夫な木材を使った彫刻が街中に配され、色合いも統一感があって大変美しい。


「こちらは旧市街ですので、ほとんどが住宅です」

 立花と鬱金が街並みを眺めていると案内役でシュラバナの高官の鷲尾わしおが細い目を更に細めて説明してくれる。


「こんな装飾が家にされていると手入れが大変そうですね…」

 芸術への造詣が全くない立花が、つい庶民的な事を言ってしまう。


「専門の職人がおりますので、手間はかからないのですよ」

 その分お金はかかるだろう。立花は戦時下にそんな事ができる国がある事に驚く。


「すごい国なんですね…」

 立花は普段、負けてレオモレアに吸収されるような国ばかり見ているので感動も一入ひとしおだ。


「鬱金は来たことあったんだよな?」

「はい。十年近く経ちますが、でも旧市街は始めてです。こっちはいいですね…」

「そうですね。こちらは陛下が即位される前の物が多いですから…」

 鬱金の言葉に鷲尾は苦笑いしている。


「何が違うんだ?」

「立花様、この景色がいつでも思い出せるように目に焼き付けておいた方がいいですよ」


 立花がよくわからないまま、旧市街を抜けて新市街に入り王宮を目指す。


「大きな彫刻が多いなぁ…」

 旧市街は等身大の彫刻が多かったのに比べると、新市街は人の5倍はある筋骨隆々とした大きな彫刻が多い。

「陛下は大きいのがお好きなんですか?」

「まあ、お嫌いではないと思いますよ?」

 相変わらず鷲尾はにこやかだ。


 そして案内された王宮は白で統一され所々金の意匠が施された、それはそれは上品な建物だった。パウロニアとは大違いである。

 城内の人々もキビキビとしていて無駄がない。


 立花が圧倒されていると謁見の間にシュラバナ王が現れた。

 この大陸で最強の名をほしいままにする、戦神である。


 他国の個性的な王と比べ、質実な逸話の多い戦神は立花の一番好きな王様だった。

 顔を上げる様に言われ、一目見る、この時までは。


 立花は多分”芸術の都の戦神”この言葉の前半の意味がよく分かっていなかったのだろう。




 目の前の玉座に居る人は、確かに神話の中の神にピッタリな容姿であった。

 珍しい金髪碧眼。怜悧な顔立ちに、細みだがよく鍛えられた美しい身体が、上半身裸の上に白い毛皮を纏っただけの為によく分かる。ボトムスも身体にとてもフィットした白い物だ。


 立花の思い描く戦神とは結構な開きがあった。どんなイメージだったかのは自分でも良くわからないが、コレジャナイ感が凄まじい。


「お初に御意を得ます…レオモレア参席将軍が家臣、立花と申します…」


 立花は動揺を圧し殺しことさら丁寧に挨拶する。


「もう堅苦しい挨拶はいいよ。話は聞いてるし、それより顔をよく見せて?」

 艶のあるいい声が、挨拶の為に頭を下げた立花のすぐ近くで聞こえる。何故だろう? 顔を上げるのが恐ろしい。


「あの、陛下…」

「違うよ。この私をそこら辺の王と同じように呼んではいけない。この私のことは虎杖いたどりと呼ぶんだ」

「い、虎杖様…」

 顔を上げた立花は息がかかりそうな距離にいた虎杖の姿に後ずさる。


「うん。

 合格。君の主人は中々分かってるみたいだから、話を聞いてあげてるんだ。言いたいことはちゃんと言ってごらん?」

 満足そうに微笑んで虎杖はいう。


「はい、例の件是非、ご承諾いただきたいのですが…」

「考えておく」

 言えと言われたのに、返事をもらえない。理不尽だ。


「それより鬱金、お前はこの子についたのか?何故だ?」

「立花様は、自分のことを大層評価してくださいまして…」

「倍出すからウチに来い」

「お断りします」

「そんなにこの子がいいのか?」

「不満は一切ありません」

「でもこの子は文官だろう? 鬱金を上手く使えるとは思えない」

「人に使われるのには疲れまして」


 虎杖と鬱金は立花を気にせずに話をしているが、鬱金が警戒心をむき出しにしているのが珍しい。



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