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2.御菓子事情

魔法学院。

この国『ミストランテ』が運営する学舎で、13~18歳の5年間通う事が義務付けられている。身分により、クラス分けもあるが、基本的に身分差による区別をしない事を信条としている学院である。


そんな学院に入学した私御堂 絢香こと、アリア・アッシュフィールドは入学式後のホームルームの様な物が終わり、同じクラスの女の子といっしょに食堂へとお茶をしに来たのです。


ザッ女子会ってノリは大好きだ。だって、色々な御菓子が食べられるじゃないですか。でもさぁ、アリアが記憶してる範囲で御菓子って無いんだよ。有ったのクッキーぐらいだぞ。おかしいよね。どう考えても、さすがにそれだけって事はないよね。きっとアリアが食べてないだけだよね?。


その性もあってか、食堂のメニューを開くのが弱冠恐い。


「アリアは何にするか決まった?私は紅茶に普通のクッキーを頼もうと思うの?」


「あとは、アリアだけ。ついでにわたしはちょっと奮発してイデアのジャムのせを頼むつもり。」


今日友人となった二人が私の希望を打ち砕きにかかってくるよ。まだ、二人がクッキーが好きって言う可能性もなきにしもあらずだけど。


普通のクッキーを頼んだ娘は、ミント・サンフラワーちゃん。名前が表す通りミント色の長髪ストレートの女の子。服は白いワンピースだと思う。私が服の種類に詳しくないのもある。解るのはワンピースぐらい。それも女としてどうかと思うけどね。


もう一人はリリス・ラムネードちゃん。水色の髪をボブカットヘアーにしている女の子。服装も全体的に青系統が多く使われている。かわいい顔付きなんだけど表情に乏しいのが玉に傷だと思う。


「あはは、私はどうしようかな。」


愛想笑いを浮かべながら、慌ててメニューを開く。案の定、そこには数種のお茶とクッキーの種類しか書かれていなかった。


マジですか!?この世界の御菓子ってクッキーだけなの?

仕方ない、ここは...


「私もお茶は紅茶で、メープルクッキーかな。」


無難な種類にしておくべきだ。


その後、二人とそれぞれのクッキーを交換しながら、それなりに楽しい時間を過ごし訳だけど、さすがにクッキーだけとは思えず、帰り道にお菓子屋さんへと寄ることにした。


二人とは学院を出て少しした所で別れた。どうやら家のある地区が違うみたい。機会があれば近くまで行ってみようかな。


ソレはソレとして肝心のお菓子屋さんである。まぁ、楽しい事ではないから結果だけ言うとね。絶望した...って素で言ったよ。マジでクッキーしかお菓子屋に打ってないよ。


この事実は私に重くのし掛かって来た。思わず、店の外壁へと手を着いてガックリとしてしまった。その後、どうやって館へと帰ったかは覚えてない。ただ、気がついたら、食堂の椅子に座っていた。


食べた夕食すら覚えてない。ようするに、それほどまでにショックだったのだ。何の為に自分はこれまで御菓子造りを学んで来たのか。それはもちろんパティシエールになる為だ。それが何の因果か御菓子がない異世界トリップとかなんていじめですかこれ?


「はぁぁ~。」


「どうしたの、アリアちゃん?ため息なんてついて。」


「あっ、御母様。」


目の前のテーブルに御母様がマグカップを置いてくれた。その中に暖かな湯気がたった紅茶を注ぎ、私の前の席へと座った。どうやら落ち込んでいる私に気を使ってくれたようだ。


「それでどうしたの、何か合ったのかしら?」


御母様、なんで幼児(おさなご)みたいに瞳輝かせてるんですか?。まぁ、気持ちは解らなくはないですけど、娘が悩んでるのにその反応はどうかと思いますよ。


まぁ、相談すれば気持ちも落ち着きますかね。っと言う訳で大筋を暈しながら御母様に相談です。


「実はですね、どうしても欲しい物があるのですが、それが何処にも売ってなくて。」


「それでアリアちゃんは落ち込んでるのね。」


「はい...」


なにやら考えこんでしまった御母様。しばらく無言な時間が過ぎると、御母様が何やら頷き、こう切り出した。


「売ってないなら、自分で造ってみたら?」


「え?......ッ!?」


自分で作る?作る。って、そうだよ。なんでその考えにならなかった私。バカだ。私って本当にバカだ。なんで自分の職業とか覚えてるのにその考えにならなかったし。私、パティシエールじゃん。自分で作れるじゃん。


まさに、身体に電気が駆け抜けて行ったよ。目から鱗。猫に小判。豚に真珠。パティシエールに御菓子だよ。


「アリアちゃん?どうしたの?」


御母様が何か言ってる気もしますが、今はそれどころではありません。やるべき事が沢山あります。むしろありすぎです。


「こうしてはいられません。」


ガタッと音をたて、立ち上がった私はすぐさま、自室へと駆け出して行く。


「これから忙しくなるぞ。」


異世界と言う環境下どこまで駆け出しの自分に出来るかと言う思いもあるが、今は気にしていられない。パンがあるのにケーキがないのはおかしいよね。彼の王女様も言ってるしね。


「さぁ、この世界に御菓子革命を起こすぞぉ。」


そんな気合いと共に自室で、これからの事をノートへと纏め始めるアリアであった。



ついでにだがその頃ミリエラはと言うと...


「あらあら、急に元気になっちゃって。でも、娘には元気でいて欲しいわねぇ。」


...っと、のほほんっと使ったマグカップを片付ける姿をリースが見つけ、慌てて手伝いを始めたのだった。

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