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14.水の都≪アルセ≫

えーと、お久しぶりな雪月華です。約1年ぶりの更新となりまして申し訳ございません。半年程ノクターンの方で書いてまして。この数ヶ月は更に書けない状態でした。

一応、続きが浮かんだので更新を続けたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

衛星都市≪アルセ≫

この都市はこの『ミストランテ』において流通の基点となる都市としての地位にある。

この≪アルセ≫には都市の至る所に水路が走り、二つの大河にも挟まれた正に水運の要衝、船と水の都と言う別名を持っているんだって、御父様が言ってた。


あの御父様からって言うと失礼だけど、あの見た目の御父様から<水の都>なんてファンシーちっくな言葉が出るもんだから、ビックリしちゃったよ。


そんなこんなで、現在その≪アルセ≫にある「アッシュフィールド家 別宅」の食堂でのんびりしながらお茶をしてる最中だったりするよ。


「いやいや、みんな無事に着いて良かった良かった。まぁ、レオンが居るから殆ど心配はしてなかったけどなぁ」


「そうですね。でも、やっぱりこうして元気な姿を見ると安心するわぁ」


御父様を超える筋肉を持ち、着ている服(タンクトップと膝上で揃えられた薄手のズボン)はそのはち切れんばかりの筋肉でパッツンパッツンにしてるのはお爺様ゲイル・アッシュフィールドで、のほほんとした雰囲気を醸し出しているお婆様ミーチェ・アッシュフィールド。

その特徴的な金色の髪は色褪せる事無く、むしろその金色は積み重ねた年月の数だけ輝きと(つや)が溢れさせているんじゃないかと思わせる。その小柄な体格も合わさって精巧な西洋人形(アンティークドール)を彷彿とさせる程だ。


そんな二人は離れた所に集まっている私達を優しく見詰めている。その中でも特に孫である私に会えるのが楽しくて仕方がないと言った感じだけど、チラチラと他の事を気にしてそちらに視線を向けるのが見られる。


「父上や母上も息災そうで何よりです」


お爺様達が息災な事が嬉しいのか御父様は普段は見せないような微笑みを浮かべているけど、やはりチラチラとお爺様達と同じ方に視線をさ迷わせている。


ン?御母様?御母様はいつものように微笑みを浮かべている。......いや、微笑みがいつもより陰りを感じる。


「......はぁぁ」


盛大なため息。

あまりにも盛大なものだから、食堂の隅の方で固まっていた私達も何事かと思わずそのため息の主へと視線を向けてしまう。


「おいおい、シュゲル。久しぶりにレオン達が帰省してるのに、そんなため息を吐いてどうしたって言うんだ」


お爺様がため息の主、御父様の弟シュゲル・アッシュフィールドへと向き直る。ついでに言うとシュゲル叔父さんは固まって座っているお爺様達から離れて一人で座っていたりする。


シュゲル叔父さんはこの≪アルセ≫でコックをやっていたりする。御父様にも劣るとも劣らないその筋肉はお爺様からの遺伝なんじゃないかと思うしだいだし、剃り上げた頭が凄くまぶしいです。


御父様に並ぶその巨体が暗く沈んでいる姿に尋常ではない何かが起きてると感じた私はすすっと御母様に寄り添うように移動する。


「親父も知ってんだろ、例のワガママお嬢様の話。そいつの使いがよぉ、うちに来やがったんだ。」


「ああ、ローメル様のお嬢さんか...」


聞く話によるとこの≪アルセ≫を納める領主、ローメル・アルセンセ侯爵。その9歳になる娘ルフティナ・アルセンセは大層にワガママだと言う。


ローメル侯爵が歳をとってから出来た娘というのもあり、侯爵は娘であるルフティナちゃんを大層可愛がり、また甘やかしてまくったらしい。産まれ家柄と侯爵である父の影響もあり、ますますルフティナちゃんは周囲から甘やかされた。その結果、ルフティナは誰の言うことも聞かないワガママな性格へと育ってしまったらしい。当然、その状況に父親であるローメル侯爵は対応しようとしたようだが、娘に嫌われたくないからかいまいち効果が出ておらず、今もルフティナはワガママしほうだいとの事。


そして本題なんだけど、そのルフティナちゃん。大の甘いもの好きらしく、この流通拠点である≪アルセ≫で手にはいる甘い果実は全て食べたと噂がある。


ここまで言えばだいたい予想はつくと思うけど、あえて言わなくちゃね。


要は甘い果実に飽きたルフティナちゃんは≪アルセ≫に店を構える料理店、お菓子屋にある難題を吹っ掛けるようになったんだ。その難題が『私が食べた事のない甘いお菓子』と言うのがルフティナちゃんがどれだけ甘いものに飢えているかが分かると言うものだ。


しかし、話はこれで終わりじゃないんだよ。むしろ終わってたらシュゲル叔父さんがこんな状態になってる説明がつかないからね。


ルフティナちゃんは自身が出した難題を達成出来ない店を、この≪アルセ≫から追い出すらしく、実際に既に10店舗以上がこの≪アルセ≫から追い出されたとの事。


「期日は明後日だってのに何も案が浮かばないんだ。このままじゃあ≪アルセ≫から店がなくなっちまうよ。」


既に何日も満足に眠れて居ないのか酷い隈を浮かべた目元も相まってヤバい形相になり始めてるシュゲル叔父さん。


そんななか......


チョンチョンと肩を叩かれ後ろへと視線を向けるといつの間にかリースが立っていた。なぜかミントちゃんとリリスちゃんも集まっているし......


「ねぇアリア。アリアならシュゲルさんの事、助けられるよね」


「アリアなら出来る」


「アリア、助けてあげないの?」


ねぇ、3人とも。何でシュゲル叔父さんに同情的な眼差しを向けながら、私に期待した視線向ける?いや、分かるけど、助けるさぁ。3人ともさぁ、絶対に私の新作の方が楽しみなんでしょ!そうなんでしょ!?


ああ、もうわかりましたよ。

シュゲル叔父さんを助けるついでに新作も作りますよ!?


半分やけくそな気持ちになりながら、私はシュゲル叔父さんへとある提案をするのだった。

久しぶり何で舞台裏は無しです。

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