10.旅行計画 (リリス視点)
ブクマして下さっている方々とても感謝します。
まだ夏の日射しが成りを潜める時間帯に私は目を覚ます。
それは誰が決めた訳でもなく、けして長くも短くもない私の人生の中で身付いた一種のクセのようなもの。正確には、朝早くからバタバタと騒がしい物音で起こされてきたから。
もう少しすれば両親や使用人達が慌ただしく動き出す時間になり、それがラムネード商爵家の...私の家の日課とも言える出来事でもある。
「眠い...けど、起きなくちゃ。」
そんなラムネード家の長女が私、リリス・ラムネード。
私の下には二人の妹がいる。名前はエヴァとヘラ。まだまだやんちゃ盛りの年頃だから、相手をするのが大変だけど、この時間ならまだ二人は夢の中だから、仕事は早くに終わらせる事にしている。
商会を取りまとめる父の才能を引き継いだのか、私には事務的な才能が高かった。それもあり、昨年から父の仕事の一部、主に従業員達からの要望書や報告書を読み答えると言う物に関わっている。
要望書や報告書を読み、父へと出す報告書を作ると言うことなんだけど、時間が勿体ないと思える。だけど父曰く今から書類の作り方を覚えられるようにやらせているらしい。その証拠に読んだ要望書や報告書もいっしょに出す事になっている。
ある程度、報告書の目処がたつ頃には太陽が上り始め、魔力ランプで照らされていた薄暗い部屋の中を朝日が射し込んでくる。その頃になると朝食の時間もあり私のお腹が空腹を訴えてくる。
「おなかすいた。」
机の上を片付けて、私は部屋を後にした。
朝食を食べた後は、しばらくは学院の勉強をする。成績は上の中程度は確保しているとは言え、油断は出来ない。だから、復習と予習に余念がない。
「お姉ちゃん、遊んで。」
「あそぼ」
「ん...構わない。何して遊ぶの?」
予習復習が一段落つく頃には妹達が私の部屋へとやってくる。平日は学院の関係で遊んであげる事が出来ないから、寂しい思いをさせていると思う。だからだと思うけど、休日に私が部屋に居ると二人揃って私の元へとやってくる。
「ご本読んで」
「よんで」
二人は双子の事もあって、趣味が似てる。外見も髪形が以外瓜二つ。でも、性格は全くの正反対。エヴァは活発で元気。ヘラは大人しくて内気な子。でも、似てる。そんな双子。
二人が持ってきた本も、二人のお気に入り。
魔法使いが魔法で色々な物を作って、貴族や平民の区別なく、助けると言うお話。何でか、二人はこのお話を気に入ってる。
そういえばこの魔法使いって、何処と無くアリアに似てる気がするけど、私の気のせいかな。
「お姉ちゃん、続き読んで。」
「つづき」
アリアの事を考えてたからか、本を読むのを止めてたみたい。二人から続きをせがまれてしまった。
この後も、二人の持ってくる本を、二人に読んであげた。
そして、二人が疲れて寝息をたて始める頃になると、私の親友が屋敷へとやってくる。
ミント・サンフラワー。同じ商爵家の幼馴染み。
ミントは暑さからかそのミント色の髪を普段とは違い、首の後ろで一つに纏めていた。あと、私よりも胸が凄く大きいから羨ましい。
サンフラワー商爵家は花や農具、種等の農作物栽培関連の賞品を多く取り扱う家柄。逆に私達、ラムネード商爵家は日用品を多く取り扱う家柄だから、商品が被る事が少ない。
それもあって、曾祖父の頃からサンフラワー商爵家とは付き合いがある。でも、他の貴族達からは少し距離を置かれている。
なぜなら、商爵家や騎士爵家は平民であっても実力があればなる事が出来る爵位だから。商業や兵士が実力や手柄を王族に認められた際、この爵位をもらうからだ。
だから元々貴族の人たちには私達の商爵家、騎士爵家は成り上がりとか、血筋が定かでないとか言って意味嫌い関わろうとする人が少ない。でも、長い歴史がある家は別だったりする。なぜなら、他の貴族同様に長い年月国を支えてきたと言う扱いから、他の貴族達からは普通に受け入れられている。
それでも、それは大物だけ。それこそ、10代20代と続いてきた家。私達の家の様に2代ぐらいだとまだまだ。
「ミント、いらっしゃい。」
「リリスちゃん、こんにちは。」
ミントを案内したのは居間。なぜなら、私の部屋では妹達が昼寝をしているから、起こしたら可愛そうだ。
二人で並んでソファーへと腰をかけ、今日ミントが来てから話そうと思っていた事を口にする。それはアリアといっしょに王都の外へ出掛ける為の計画。ミントからの提案だったけど、これには私も乗り気だ。
でも問題がある。
私達と仲良くしてくれているけど、アリアは子爵。何かあると大変な事になってしまう。最悪、私達の家が無くなるかもしれない。
それでも、友人になれたんだ。せっかくの初めての夏期休暇。何か思い出を作りたいと思っている。
でも具体的な案は出てこない。二人で考えているけど難しい事。
どうすればいいのか。
数日後、その問題は当のアリアによって解決する事になる。
「ねぇ、二人とも。私の家の別宅に遊びに行かない?」
その日、ミントといっしょにアリアの家へと勉強をしに来た昼下がり、唐突にアリアがそれを口にした。
確かに子爵であるアリアの家なら別宅ぐらいは持っていると思う。それに、思い出を作るとなるとこれもいい思い出になる。それならば断る理由はない。
ミントに視線を向けると視線同士がぶつかると同時に頷きあう。どうやら、ミントも同じ気持ちのようだ。
「アレ?もしかして、何か先約がある。」
「「いえ(や)、ないです。もちろん行かせて頂きます。」」
こうして、この夏私達三人の旅行が決まった。
舞台裏は特にありません。
次回も早くあげられるように頑張ります。




