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前編

前後にするか、前中後にするかは未定。

自分よりも美しい白雪姫を狩人に殺すよう命じた王妃は、今日も魔法の鏡に尋ねるのです。




「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

薄暗い王妃の私室で、王妃ベルテは大きな鏡の前にしゃがみ込み、言いなれた呪文を口ずさんだ。


「君って、そんなキャラだってっけ?」

誰もいないはずの背後からかけられた声に、ベルテは驚きのあまり大きく体を跳ね、鏡にしがみ付くように倒れこんだ。

そして、恐る恐る振り返る。

「!!!先輩!!!」

そこにいたのは黒いローブを纏った青年。

ベルテにとっては同じ魔法使いの師について学び、世話になった先輩ロークだった。

「ふぇぇぇん。

 先輩、連絡取りたくて一杯電報魔法送ったのに何で返事くれなかったんですかぁ!!」

「忙しかったんからしょうがないじゃないか?

 一応、こうして会いに来てやったし?」

子供のように泣きながら抱きついてくるベルテの頭を手で押さえ引き剥がしながらロークは応えた。

童顔で背も低く、立ち振る舞いも幼い感じが残るベルテは師の下を巣立って数百年になっても、ロークにとっては子供子供していて放っておけない妹弟子だった。

そんな妹弟子が結婚、しかも相手は再婚の国王だと聞いた時は驚いたものの、自分の方の用事が手を目を離せないものだった為、放置・無視を決め込んでいたが、あんな台詞を鏡に向かっていうようなキャラになると分かっていたら放っておいたりはしなかった、と少し後悔していた。

そう考えながら、大きな鏡に目を向けると違和感を感じた。

「あれって魔法の鏡?不器用な君が作れたんだぁ。

 ・・・でも、何か魂入ってない?」

「ふぇ・・・ふぇぇぇ。それ、先輩に助けて欲しくって・・・だから・・・」

涙に鼻水に、大変なことになっているベルテの顔に持っていたハンカチを叩きつけ、ロークは鏡に近づき手に触れた。

「・・・この魂は・・・・

 ベルテぇ、君、またドジったねぇ?」

「ふぇぇぇぇぇぇん」


「これって、君の旦那さんでしょぉ?

 何、夫婦喧嘩にしては、ちょっとやり過ぎじゃない?」

「違うんですぅ~

 あぅちょっ、先輩~つむじ突かないで~」


『あんまり、うちの嫁を苛めてくれるなよ。』


ロークがベルテのつむじをツンツン突いていると、それまで何も映していなかった大鏡の中に、がっしりとした体格の男の姿が映った。

それは、ロークも昔見かけたことがある、この国の王の姿だった。

「これは、これは、ネージュ国王オウル殿。

 うちの不肖の弟子が迷惑をかけているようで。」

『まさか、話に聞いていたが、ベルテの世話になった優しい先輩があんただとは。

 何かの間違いではないかと思っていたが、本当だったんだな。』

「手間がかかる奴ほど可愛いというだろ?」

「ひどっ、ひどいです~先輩。」

ベルテは頭の上で手を大きく振り、ロークの手を追い払おうとしているが、ロークにとっては何の障害にもならないとベルテの手の合間を見計り、つむじを押し続けている。

「《夢のような人生が歩めるよう》の祝福を間違えて、

 《青春時代になったら死ぬ》って呪いにしちゃったのは誰かなぁ?

 君だよねぇ?

 それを《ちょっと長いこと眠る》ってことにしてあげたのは?

 僕だよねぇ?

 迷子の子供たちにお菓子の家を造って助けてあげるっていう試験の時に、

 竈の火をくべ過ぎて全焼、子供達を焼死させかけたのは誰ぇ?

 その時も、子供達を助けたのは僕だよねぇ?」

『それは・・・・ドジで済まされないだろ、ベルテ。」

「うわぁぁぁぁん」

修行時代の失敗の数々を言い並べ、その指の動きからも失敗話はまだまだ出てくる勢いに、鏡の中からオウルは笑うことも出来ずに微妙な表情を浮かべ、ベルテは恥ずかしさと申し訳無さに大泣きの態勢に入った。

「で、今回は何?旦那さんを鏡の中に閉じ込めちゃったの?

 っていうか、政務はどうしてるわけ?」

『あぁ、それなら私の体にベルテの使い魔が入って誤魔化してくれている。

 このことを知るのは一部だけだから、混乱もない。』

「あぁ、ベルテには有能すぎるって有名な使いクレメンスかぁ。

 あいつは政治とかにも詳しいから役に立つだろうね。」

魔法使いの仲間たちの中でもベルテの名前は知れ渡っている。

それは、そのドジッ子さと修行時代に契約を交わして手に入れた使い魔が文武両道で有能すぎるということでだった。 

『それで、最強と名高き黒の魔法使いローク殿。

 あんたは、ベルテの魔法を解くことが出来るのだろう?

 流石に、クレメンスは有能すぎて、これ以上は俺の居場所が無くなってしまう。』

「ん~出来るけどぉ?でも、それでいいのぉかな?」

『どういう・・・』


「あっ、オウル様ぁ!!

 時間が!!!」


床にうつ伏せになり泣き喚いていたベルテが、いつの間にやら手に時計を掲げ、鏡の中のオウルに差出し、時間を示した。

『おっと、悪いなローク殿。

 ちょっと野暮用を済ませてから続きといこうや。』



「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」


ロークに一歩下がってもらい、ベルテが鏡の前に立つと、ベルテが言うには違和感がありまくりでロークが首を傾げる言葉を紡いだ。

すると、鏡の中にいたオウルの姿が消え、マーブル状の波紋がグルグルと回った後に、深緑の美しい森が上空から映ったまま徐々に地面に落下していき、一軒の山小屋が移されたと思えば、一人の少女の姿が映し出された。


カラスの濡れ羽根のように美しい漆黒の髪

降り積もった雪のように真っ白な肌

口元を彩るのは、血の色のような紅


世界中にその美しさを轟かす、この国の王女スノーホワイトだった。


『世界で一番べっぴんなのは、うちの娘に決まってるだろ。』

誇り高々に宣言するオウルの言葉は、ただの親馬鹿と片付けることもできないものだった。


でも、ロークの目にはオウルの言葉に少しだけ落ち込んだ様子を見せたベルテがしっかりと映ったのであった。

黒の魔法使いは、前作の「ヤンデレ魔法使い」と同一人物です。

シンデレラのちょっと後になります。

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