だべり遊び
「将棋の名人とチェスの元チャンピオンの対談がテレビでやっててね、面白かった」
「あっそう」
「殺傷力」
「いや結構興味あるよ、どんなだった?」
「文字だと感情乗らないからね、配慮してくれる? ……まあいいや。ざっと面白い点を。チェスの人が言うには、
○超トッププレイヤーは、あらゆる局面を見て、瞬時に『この辺がカギだ』と嗅ぎつける。
……という。それで余計なところで悩まずに、大事な要所だけを集中して読むことができる。駒の価値、キングに迫るスピード、とか色々天秤にかけてその中から当意即妙に選択できるのが超トッププレイヤーだって」
「あっすみません、コーヒー、お代わりで」
「店員さんを呼んでカップを指差しコーヒーお代わりと頼んだ君、話聞いてた?」
「私を実況したな」
「するよ。説明しないとわからないだろ。てか話聞いてた?」
「いや説明いらないでしょ、状況一発でわかるセリフだったじゃん……、あ、どうも」
「店員さん、僕の連れにコーヒーお代わりをどうもありがとうございます。あ、会釈していただいて、こちらこそどうも……では、また後ほど。会計時に」
「……オイやめろよ、なんだよ気色悪いな。店員さんの作り笑顔悲痛だったじゃん」
「より多くのパターンを素早く認識して、『あぁこの場合にはこの辺りをこうするのかな』という感じですぐわかる、という境地に至りたいなぁ僕も」
「つまり当意即妙だね」
「そう。それ僕言ったと思うけどホントそう。ねぇあとツッコミ。僕すごい無理に話題戻したのに」
「臨機応変ってほうがこの場合マッチしてるとは思うけど」
「あぁうん……」
「てかさ、お前って説明ヘタだよね。少ないしポイント外してる感じだしさ。一番わかりにくいやつだよ」
「急角度でベッコリ凹まされた」
「擬音がキモい」
「僕は僕なりのリアリティを表現してんだよ。擬音もそうだし、説明をなるべく削るのも、もっとなんていうかな……皮膚で感じて脳にビリッと、そういう電気が走るような早さで認識させたいんだよ、読んでる人に」
「けど伝わらなくて『ん?』ってなったらそこでストップすんだよ。無駄にリスキーじゃん」
「いや……てか、もうこの流れは最後には僕が『理屈じゃねぇ! やるったらやるんだよ! ベイベ!』って感じになりそう」
「ベイベって久々に遭遇した。きもっ。しかもイントネーションきもっ」
「イントネーションについては説明が必要だけどまあしなくていいや」
「これ普通に書くのやめて会話方式にした理由、そろそろ聞いていい?」
「なんとなくだよ」
「知ってた」
「人工知能の未来について考えてみよう」
「完成して普及したら人間は労働から解放ってか追放される。終了」
「順を追おうよ。まず肉体労働は機械がだいぶ肩代わりしてるよね」
「産・業・革・命♡」
「好きなの?」
「お前のツッコミ、ツッコミになってないしつまんないからキライ」
「全部が全部ボケやツッコミな世界じゃないでしょうが」
「電話交換手って存在が印象的なんだよね私」
「そんなタイミングで急に出すくらいに」
「そうだよ。電話っつうもんが普及し出した最初の頃は、誰かに電話かけるってなった時はまず受話器取って、電話交換手のお姉さんに言うんだよね『○○まで』って。するとお姉さんがそこに繋いでくれるんだってさ」
「いつの時代だよ」
「百年前くらい?」
「大きなのっぽの古時計が新品だった時代か」
「それ流動的過ぎる。しかもそれ、元の英語だと80年だから」
「え。リアル」
「それを百年にしちゃう日本の長寿さが伺い知れるエピソードだよね」
「語呂の問題でしかないでしょ」
「うっせ♡」
「ハート付けるの気に入ってんの?」
「気に入ってる。積極的に使っていこうと思ってる」
「たぶんだけど、適切なところで使う気なさそう」
「電話交換手っていう職業が自動化されて消滅したように、今人の手でやってる仕事も結構減っていくんだろうね」
「コーヒーお代わりとかもセルフサービスになって」
「いや、もっとデカくいこうぜベイベ」
「盗ったな」
「牛丼屋とか、そろそろ全自動になるんじゃない?」
「それはSFすぎるでしょ。pepperとかにワンオペやらせるとか?」
「ワン・オペレーションって言葉はカッコいいのにブラックな意味なんだそうね」
「地下鉄とかもワンマン運転とか見るよ」
「ワンマンライブ・イン・アンダーグラウンド」
「ナウ・オン・セール。チェキラゥ」
「ダァシェリアース」
「僕ら何言ってんの」
「告知」
「チケットのお求めは、お近くの切符売り場にて!」
「Suica・PASMOでのご購入も受け付けております!」
「ご乗車!」
「「オマチシテォリマァス」」
「僕は……こういうのは良くないと思う」
「駆け込み乗車はぁ、危険ですのでお止めください。やったら殺すぞ♡」
「電車が?」
「そう。殺すぞ♡ つって」
「機械の無慈悲なところが出た」
「別に鉄道馬車の時代から死亡事故あったとは思うよ」
「鉄道馬車……読んで字の通り、馬が引いて走る電車みたいなヤツね。昔の」
「よくも説明したな。で鉄道馬車ってさ、乗ってみたいよね」
「急角度で感情出してきた」
「いや実はそんなでもないけどさ。昔の街っていうのが見たい、どちらかと言うと」
「馬が居るって事は馬糞もあるってことだよ」
「ばっふんだ」
「ドリフのオチのセリフをもじったね」
「よくも説明したな」
「ドリフも最近は再放送されなくなってきたね」
「私ら子供の頃は結構頻繁にドッドッドリフしてたよね」
「あれってコント新作と昔のが入り混じってたよね、たぶん」
「たぶんでしかない。私ら記憶共通だからね。話してても発展しないよ」
「だめだこりゃあ」
「うーわ。顔しか似てねぇ」
「何も似せてるつもりは無かった」
「などと供述しており」
「あ、それいつか使ってみたかったヤツだね」
「やっと使えた。適切なタイミングかはわからない」
「そういうのばっかりだよ。僕ら」
「一緒にすんなよ、私は違う」
「やめろよ、分裂症とかなんとか言われるぞ」
「誰に?」
「自分に」
「ややこしんだよ。あとなんとかしてオトせよ、オチてねぇんだよそれ」
「オチとかサゲとか、そういうのだけの世界じゃないんだぜベイベ」
「うっせ♡」
「女の子に言われたいような言われたくないようなセリフ5〜6位のヤツだ!」
「全てが曖昧模糊」
「久々に聞いたその言葉。なに? 小野妹子のお姉さん?」
「そう」
「名字違うじゃねぇかバカ!」
「うっせバーカ!」
「女の子に言われたいセリフ2位だ」
「高っ、きもっ」
「なお他のランキングは全て未定です」
「マシュマロ飲んで♡」
「7位」
「高確率で死ぬのに?」
「窒息死って絶対にイヤな死因2位だよね」
「1位は?」
「焼死」
「焼死って大抵は煙で意識失って酸欠死のコンボらしいよ。身体が燃えてダメージ死するわけじゃない」
「ベトナム戦争時に道路で僧が座禅しながら燃えてる写真がテレビで出ててね」
「国営放送の『こころの時代』とかいう番組ね、あれ普段スーパースローシニア対談番組だと思ってたから油断したよね」
「あの回はVTRだけでよかった。すごかった」
「生きるか死ぬかの世界をくぐって来た人の眼って強いよね」
「何か独特の光があるよ。胸に届くようなね」
「生きて腸まで届く乳酸菌」
「たとえ死んだとしてもその屍は仲間のためになるんだ乳酸菌」
「らしいね」
「修羅の世界だぜ、腸内」
「小腸のシワシワを全部丁寧に伸ばして拡げると、その広さはテニスコート1面ぶん!」
「誰だよそんなグロいことしたヤツ」
「してねぇよ。計算上の話だよ」
「NHKの大科学実験でやってたんじゃないの?」
「やるわけねぇだろバカ!」
「うっせバーカ!」
「1位」
「なんで上がった」
「いや、展開的に」
「それでなんだっけ、腸の話だっけ」
「ホルモン」
「牛の内蔵ね」
「うっしっし」
「いよいよダメだな。ダメな時間になってきた」
「じゃあ、ここはもっとあの記号を濫用して景気つけてよ」
「やーだ♡」
「それはあざといだろ。真剣に許さない」
「そんな怒る?」
「これまでの流れを無視してるし、面白みがない。僕の求めてるものと違う。それはもうマヨネーズとマリナーズくらい違う。違いすぎて腸まで届くはずがテニスコートに迷い込んで干からびてファブリーズの水分で復活してまた干からびてしまうくらい遺憾なことだ」
「すみません、お会計いいですか?」
「よくないよ」
「うっせ早く払え♡」
「もっといい言葉に使って欲しいな〜……」
「例を挙げよ」
「なんかさあ、こう……マイナスな言葉に合わせるのがいいと思うんだよ」
「だから例を挙げよ」
「財布忘れた♡」
「殺すよ♡」




