梅雨(つゆ)って、当て字も甚だしい
アガサクリスティのデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』は、序盤こそ、日本語訳文がカタコトっぽくてなんとも読みにくくストレスフルだったが、中盤以降は訳者か僕が慣れたのか読みやすくなり、話にも入りこめるようになった。どことなく現在にも受け継がれているような、巧妙な筋だった。愛情云々を絡めて複雑にするのは、確かに良い手だ。
ミステリーというひとつのジャンルでも(もしくは、だからこそ)それぞれに個性を見比べられる。僕は、愛情多用はすこし冷める。軽くアンフェア(なんでもアリっぽい感じ)だし。
米澤穂信『夏季限定トロピカルパフェ事件』はとても見事だった。もしラノベだとしたら最高クラスだろうと思う。短編ごとに成立している上に、長編として組み込む器用さ。氷菓と、この前作『春季限定いちごタルト事件』(タイトルうろ覚え)と比べると、格段に完成度が高い。しかし、どことなく格調は低い(書き方がチャラいとかじゃなく、説明の感じがなんとなく)。それは作風というか個性なのかも。なーんだか違和感があるんだよなあ。嫌いってことか。でもこの一冊は褒めるしかない、ってぐらい良く出来ていた。
ジャケットのイラストレーターの絵柄が好きだから買った、という動機は伏せておく。
イラストレーターと画家との違い。
画家は、自らが描きたいものを描く。
イラストレーターは、求められるものを描く。
これを、作家とラノベ作家に変換すると……やっぱやめ!
画家が描きたいものだけを描いているというのは、たぶん、ちょっと夢イメージすぎます。
画廊がどうこうだの、あれこれしがらみがあるものと推測していますので。ある種アーティスト達は、自分をプレゼンする感覚を持って世渡りしているだろうとは思う。
漫然と描いているだけで食っていけるほど競争率の低い世界ではない。
そしてイラストレーターを、商業の奴隷のように見くびらないで欲しい。当然、彼らもアーティストだ。
イラストは、時代を反映しているという。時代のラベルとなる機能があるのかも。
まだ見たことのないような、かっちょいい仕事を拝見していきたいものです。
コピーライターの作品集的な本をチラ見。
冒頭からサントリーのCMのセリフ全文といったような、コピーとしては長い感じの文がずらずら。最初に、安いウイスキーのトリスのがあった。今はあの薄い顔立ちの女性のCMが記憶に新しい。
僕も考えてみた。
「また、プレミアム?
わたしは、プライマリー」
サントリーウイスキー、トリス。
ウイスキーはわりと好きです。麦を主原料にしたのがスコッチで、コーンを主原料にするとバーボンです。
へえ。
広く売られているのもいいけど、ちょびっとお金を上乗せしてシングルモルト(ひとつの蒸留所で作ったもの)で個性を楽しんでみてはいかがでしょう。僕は今のところ『余市』と『白州』しか知らないけど、だいぶ違います。前者は華やかで、後者はクールで澄んだ感じ。
基本、酒は脳を弱らせるので超嫌いですが、良い酒は良い創作物として感心しながらたしなめるので、ちょっと好きです。
外で良い酒を飲もうものならバブリーに金が消し飛びますが、普通に酒屋でボトルを買えば案外安いものです。余市は600mlで1600円くらい。白州は知らんけど。
安いブラックニッカだと720ml入って楽勝で千円切ってきます。居酒屋、ガンバ。
でかい酒屋って楽しいですよ。
世界的に水不足になったら、酒が高騰するかもなあ。
脳の本を読む。
消化しづらいカタイ食べ物のごとしで、まったく、ちびりちびりとしか読めない。気づくと、思考が空転して一行を狂ったように繰り返し目でなぞっている時がしばしば。
でも読みやすい章もあって、そこを重点的に読んだ。内容は、今頑張って思い出します。たぶん難しいです。
海馬は30分の記憶を担当し、それ以上に保存するにはどこか別のところにしまうとか。
連想のメカニズムは、記憶の方法に近いとか。
グルタミン酸は、ギャバの反対に、脳を活性させるらしい。でも体内で生成できる。
脳のシステム、アフリカを出た人類の世界拡散、言語の発展、文化の継承、経済心理学、宇宙の原理、素粒子の仕組み……。
いろいろと共通性を見出せる。それにより、今、研究分野の融合、協力が増えている(結構前から)んだって。三十年前くらいに、脳の分野で物理学的なアプローチが活かせそうだぞ、と一報が走り、研究の主題が見つけられなかった物理学者たちが脳の分野にたくさん進出したという。
脳のシステムと、コンピュータの記憶の仕方は全然違うらしい。まあ、そんな気もするよね。
で、脳の並列的な力を備えた、ニューロコンピュータなんていうものを開発しちゃうもんねと意気込んでいる人もいるとか。その人はもともと脳の時代が来ると読んでいて、パームコンピュータだったかベンチャーで一発当てて出来た私財を突っ込み、脳の研究所を作ったとか。豪気な人だ。
CERNという、素粒子の研究所もまたべらぼうな世界らしい。巨大な粒子加速器に群がるようにして、各種センサーだのビル並みの検出器だのをくっつけ、様々な研究団体がしのぎを削るように成果を求めているという。
しかし粒子加速器という設備は、たぶん交代で譲りあって使っているのか、実験データを共有しているのか、とにかく仲がいいのか悪いのか良くわからなくて微笑ましい。
ヒッグス粒子が見つかっていたなんて……。ついに、重力さえも素粒子の仕業だという話です。まじかよウソつけ。
あと、何の本を読んだっけか。
あ、前回のカンブリア宮殿が当たりだった。
ラップの芯などで見る、あの紙の筒で建築してしまう人の回だった。板茂という、苗字のようなフルネームのおっちゃんだったが、とんでもなく偉い人だった。
筆舌に尽くし難いので、尽くさないでおく。
真に優れたアイデアの力強さを見た。建築とは何か……久々に染み入る回だった。村上龍も涙目だった。小池栄子は相変わらず新幹線だけど、今の新幹線はもう全然小池栄子じゃなくなってるよね。
なんだその終わり方。




