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愛だけを失った世界「サーベスティア」  作者: 佐々木 綾
第5章 仕事とミシェン
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その4

 この日も無事に仕事を終えた。

「腹減って力がでねえ」

「あたしも」

「私も……」

 何だかフラフラする。

「金は貯まってきたが、朝食買えるほどじゃないな」

「ああ、まだまだだな」

「寝るか」

「そうだね」

「おやすみ」

 私達は横になった。

 雨が降った日は、服がびしょ濡れになって仕事に行けなくて、次の日に怒られた。ミシェン達も相変わらずで、気分が落ち込むことはしょっちゅうだった。

 そういえば、私の希望の鉢植えはどうなっているのだろう。ちゃんと育っているだろうか。それとも、水をあげてもらえなくて枯れているだろうか。

 何だか気になって落ち着けなくなってきた。もうサーベスティアの道には慣れたから、行けるかもしれない。

 私は立ち上がって、ゆっくり位置を確認しながら歩き出した。まっすぐ歩いて、出た先に目印になるものを探して、森に戻れるように頭にインプットした。

 レンガの道を外れないように、南西へ向かった。確かこの辺だった筈。

 ポッと色んな色に光っているのが見えた。もしかして、希望の木も光るのだろうか。私は橙色の光を探して歩いた。

「あった」

 手で周りを探ってみると、懐かしいじょうろの場所や形、大きさ。そして蛇口。ここがミシェンの家で間違いない。

 ということは……、この花の蕾がついているのが、私の希望の鉢植えなのだろうか。

 罪を犯したにも関わらず、ここまで生長してくれた。神様は私の行いを見ていてくれていたのだろうか。フラフラになりながらも働いた結果が、この橙色の花の蕾なのだろうか。

 嬉しく思っていると、人の足音が聞こえてきた。

 聖職者か、と思ったら、

「来たのか、リコ」

 ミシェンの声だ。

「ミシェン……」

 彼は私の隣に立った。希望の木の光で横顔が薄っすらと見える。

「今どこに住んでいるんだ? 何故出ていった?」

 口調が冷たい。

「そ、それは……」

 言えない。六色の実の一つを食べて、追いかけられて森の中で野宿しているなんて。

「……六色の樹の実を食べた犯人って、リコなんじゃないか」

 私は固まった。バレている。

「いなくなった日から六色の実は光り出さなくなった。実際に行って確認したんだ。正直に言え」

 ここまで言われてしまったら、もう話すしかない。私は覚悟を決めて、ミシェンの方を向き、言った。

「私が、食べました」

「やっぱりな」

 ミシェンは目を瞑った。

「何で食べたんだよ」

「それは……、その、出来心で、きっと何かが変われるって思って……」

「崇められている樹だと言わなかったか」

 口を強めて言う。

「で、何処に住んでいる」

「野宿してる……」

 正確に森の中と言ったら、聖職者が襲ってくると思って、流石に言えなかった。

「他の異世界から来た人達と一緒に、野宿してる。聖堂には戻れないからって」

「当然だ」

 ミシェンは突き放して言った。私の目には涙が滲んでいた。

 彼は私の希望の鉢植えを持つと、

「これ持って、さっさと帰れ」

 と言って私に手渡し、家の中に戻っていった。

 涙が頬を伝った。

 暫くして涙を拭い、私はトボトボと歩き出した。レンガの道を反対側へ歩いていく。希望の実の蕾の光が少しばかり頼りになる。

 目印にしたところまで着くと、私は森の方向へ体の向きを変え、まっすぐ歩く。やがて、寝息と、花の蕾の光で、人がいることを確認できた。二人、横になっている。

 私は鉢植えを置き、横になった。暗い顔をして、ただボーっとしていた。

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