その4
この日も無事に仕事を終えた。
「腹減って力がでねえ」
「あたしも」
「私も……」
何だかフラフラする。
「金は貯まってきたが、朝食買えるほどじゃないな」
「ああ、まだまだだな」
「寝るか」
「そうだね」
「おやすみ」
私達は横になった。
雨が降った日は、服がびしょ濡れになって仕事に行けなくて、次の日に怒られた。ミシェン達も相変わらずで、気分が落ち込むことはしょっちゅうだった。
そういえば、私の希望の鉢植えはどうなっているのだろう。ちゃんと育っているだろうか。それとも、水をあげてもらえなくて枯れているだろうか。
何だか気になって落ち着けなくなってきた。もうサーベスティアの道には慣れたから、行けるかもしれない。
私は立ち上がって、ゆっくり位置を確認しながら歩き出した。まっすぐ歩いて、出た先に目印になるものを探して、森に戻れるように頭にインプットした。
レンガの道を外れないように、南西へ向かった。確かこの辺だった筈。
ポッと色んな色に光っているのが見えた。もしかして、希望の木も光るのだろうか。私は橙色の光を探して歩いた。
「あった」
手で周りを探ってみると、懐かしいじょうろの場所や形、大きさ。そして蛇口。ここがミシェンの家で間違いない。
ということは……、この花の蕾がついているのが、私の希望の鉢植えなのだろうか。
罪を犯したにも関わらず、ここまで生長してくれた。神様は私の行いを見ていてくれていたのだろうか。フラフラになりながらも働いた結果が、この橙色の花の蕾なのだろうか。
嬉しく思っていると、人の足音が聞こえてきた。
聖職者か、と思ったら、
「来たのか、リコ」
ミシェンの声だ。
「ミシェン……」
彼は私の隣に立った。希望の木の光で横顔が薄っすらと見える。
「今どこに住んでいるんだ? 何故出ていった?」
口調が冷たい。
「そ、それは……」
言えない。六色の実の一つを食べて、追いかけられて森の中で野宿しているなんて。
「……六色の樹の実を食べた犯人って、リコなんじゃないか」
私は固まった。バレている。
「いなくなった日から六色の実は光り出さなくなった。実際に行って確認したんだ。正直に言え」
ここまで言われてしまったら、もう話すしかない。私は覚悟を決めて、ミシェンの方を向き、言った。
「私が、食べました」
「やっぱりな」
ミシェンは目を瞑った。
「何で食べたんだよ」
「それは……、その、出来心で、きっと何かが変われるって思って……」
「崇められている樹だと言わなかったか」
口を強めて言う。
「で、何処に住んでいる」
「野宿してる……」
正確に森の中と言ったら、聖職者が襲ってくると思って、流石に言えなかった。
「他の異世界から来た人達と一緒に、野宿してる。聖堂には戻れないからって」
「当然だ」
ミシェンは突き放して言った。私の目には涙が滲んでいた。
彼は私の希望の鉢植えを持つと、
「これ持って、さっさと帰れ」
と言って私に手渡し、家の中に戻っていった。
涙が頬を伝った。
暫くして涙を拭い、私はトボトボと歩き出した。レンガの道を反対側へ歩いていく。希望の実の蕾の光が少しばかり頼りになる。
目印にしたところまで着くと、私は森の方向へ体の向きを変え、まっすぐ歩く。やがて、寝息と、花の蕾の光で、人がいることを確認できた。二人、横になっている。
私は鉢植えを置き、横になった。暗い顔をして、ただボーっとしていた。




