無駄話
「なにか面白い話しはあるかね?」
そう部長に聞かれた新入社員のわたしは酒の席に酔ったのもあったが
中学生の時にあった不思議な出来事を話し始めた
「これは僕が中学生の時の話しなんですが、その頃の僕は無駄話というものに何故かまとわりつかれていまして。」
「まとわりつかれる?日本語がおかしくないかね君。」
「いや、ホントにまとわりつかれていたんですよ。何故か僕の言った話しは無駄になってしまうんです。」
「無駄になる、というと?」
部長はよくわからんと言った表情を浮かべわたしに顔を近づけてきた
わたしはあまり饒舌な方ではなかったが、その表情をみるとなんだか可笑しくなって話しを続けてしまった。
「いや、例えばですよ、ゲームの発売日がいついつだと僕が友達に言ってしまうと、必ずそのゲームの発売日が延期になってしまったりとか。」
「ほ~、そりゃ確かに無駄な話だ。」
くっくっくと部長は苦笑しながら相づちをうってきた。
そこで私はこの話に区切りをつけ別の話に持って行った
「ところで部長、明日は専務のお誕生日だとか。」
「ほぉそうなのか。それは知らなかった。」
「それしても何故君は専務の誕生日を知っているんだね?専務に恋でもしているのか?」
「いやぁ、実をいいますと、僕ではなく専務が部長に恋をしてるんです。」
「ほぁ!?そりゃまたなんで。」
「部長の独身でありながらめげないあの打たれ強さに惚れていると今日聞いてしまって。」
「ははは、それは大変に嬉しいことだ。」
「まぁかくいう私も専務の事が前々から好きだったんだがな。」
「ええ!!そりゃすごい事ですねぇ、社内恋愛ならぬ社内両思いですか。」
「君よしたまえよ、年上をからかうもんじゃない。」
そう言っている部長の顔は、言葉とは裏腹に確かにほころんでいた。
わたしはそんな顔の年上を見たのは初めてであったため、どことなく気恥ずかしく思った
「というか、君は私が思っていた以上に面白い男だな。」
「それはそれは光栄の至りでございます。」
「中学生の時と違い、まったく持って無駄な話などしていないしな。はっはっはっは。」
「そんなに背格好は中学生の頃と変わってはいませんけどね。」
「人間、内面の成長こそが重要だ。では、また明日。有益な情報ありがたく頂戴するよ。サプライズで驚く専務の顔が 容易に想像できる。はっは。」
「よろこんで貰えて光栄です。では又明日。」
それを最後に私は部長の後をつける形で居酒屋を後にした。
次の日、部長が昨日の帰り道で車にひかれて息を引き取った。と会社で同僚に聞いた。
「やれやれまた無駄話だったのか。」
そう言ってわたしは、仕事を再開した。
あまり情景描写はないです。すみません。
誤字、脱字、などがあれば教えて下さい><