ピースと兄姉
「罰は実質無いに等しい」と思っていた時期が私にもありました。
翌日、3番目の兄に呼び出されていた。
ということは必然的に9番目の姉もいる。
彼女たちは母親が同じなのでよく行動を共にしている。
コンコンコン
「はいr」
「ピース?いいわよぉ~入ってらっしゃい~」
そんな声を聴きながら扉を開け
「クリスお兄さま、ラルムお姉さまお久しぶりです。本日はどうされましたか?」
きれいに一礼し入室する。
「昨日森にいったんだって?」
「はい。それでとうさ…お父様からお叱りを受け現在謹慎中にございます」
「そうか。実はな…お父様からお前が引きずり過ぎてないか心配だから様子を見てきてくれと頼まれていてな。怒ってはいただろうがあれはお前が可愛いから言ってるのであって決して嫌いなわけではないのだと伝えてほしいと…」
「はい。分かっております。クリスお兄さま、ご心配なされ過ぎないようにとお父様に伝えていただけますか?」
「あぁ分かった。お父様もこれで公務に集中なさることができるだろう」
「はい。要件は終わりでしょうか?」
「あぁ。朝から呼び出してすまなかったな」
「ではクリスお兄さま、ラルムお姉さま私はこれにて失礼いたします」
「あぁ気をt」
「ピース?前から言ってるでしょ?お硬い言葉使いは入室時の挨拶とか必要なことだけにしなさいって!それにまだ終わってません。ほーらおいで」
ラルム姉さま自分の足を叩いて私を誘導し、膝の上に座らせる。
捕まった。こうなっては当分逃げられまい。
「そうです…そうだね。ラルムねぇちゃん今日はどうしたの?」
「そうそう。それでいいのです。いやね?ピースが外に出かけたって聞いて好奇心旺盛だなぁ~って思ってたんだけど今朝うちのメイドからクリスお兄様がピースと会うって聞いて飛び入り参加しちゃいましたぁ~」
朝から相変わらずのアクセルベタ踏みエンジン全開でハイテンションな姉である。
三人で昨日のことを話しているとふと机の上のボードゲームの盤面が気になった。
「これはどういう戦況で?」
「それはねぇ~ピースが来るまで遊んでたんだけど奇襲戦法試したらてんでダメで…」
「奇襲というよりかは無理攻め以外の何ものでもなかったがな」
「可愛い妹に対してその言い草はないでしょ!」
「盤を囲めば対等な対局者だ」
そんな言い合いをしている間に戦況を見つめていると姉さんのほうが有利な筋を発見した。
「あれこれラルムねぇちゃんの奇襲成功してない?」
「「え?」」
「ねぇ代わりに指してもいい?」
「いいわよぉ~」
このボードゲーム名前を「ピヨンス」と言いルールは日本の将棋と同じで駒の呼び方が異なるくらいだ。
ラルム姉さまが使った奇襲戦法というのは「新・鬼殺し」と呼ばれるものに近いものだった。
脳内で考えるときは趣味だった将棋の駒と同じ呼び方をしてしまうが
手順としては▲7六歩△8四歩に対して▲7五歩△8五歩▲7七角△3四歩▲7八飛で、△7七角成▲同桂となり今は△の手番つまりクリス兄さまの番だ。
(▲先手△後手)
ここで△4二王から最善手を指し続ければ後手有利になるのだが、この世界において王は初期地点から動かずで戦い終盤にようやく動き出すというのが常識だ。
玉の早逃げや囲いの概念はほぼない。
難しい話は置いといて午前中はこのまま「ピヨンス」をクリス兄さまvsラルム姉さま+私で指した。
結果は私たちの勝ち。
そのまま三人で昼ご飯を食べて解散となった。
私はこの時もラルム姉さまの膝の上で過ごした。
午後
ダンジョンの戦利品である短剣。
これを見た時から付与魔術が込められているのではないか?と仮説を立てていた。
実験に使えるのは短剣1本しかないのでとりあえず付与魔術とはなんぞや?という疑問を解消すべく何往復も本を読み理解できた。
付与魔術に関する魔術書は第一図書館にも何冊かあったが、入門書や原理を解説するもので技術や応用までは書いていなかった。
今回買ってきた本でその穴が埋まったため今回はそれを試そうと思いいたった。
特殊な触媒が必要なのだが、それは魔液と呼ばれる魔力に対しとても強い保持力を持ち、浸透性も高いため付与魔術を使う上で必須ともいえる品だ。
魔液は魔核…倒した魔物の心臓を粉末状にしたもの…を油に混ぜ込みながら溶かし魔鉱と呼ばれる魔力伝導率が非常に良い金属を入れて煮込んだら完成する。
現物を使ってもいいがせっかくなら1から魔液を作ろうと思い材料はあらかじめわかっていたので魔核と魔鉱は事前に買いこんで倉庫にぶち込んである。
問題はその倉庫に今私が入れないこと、当日市場に買いに行けばいいやと思っていたため油がないこと、そもそも論付与するための武器がない!
この前倉庫を確認しに行った最大の目的は献上品に剣があるか否かである。
結論なかった。
当たり前で実際に使うときの私の体格がわからないのだから
「将来使うから~」
と昔に送られているわけもなく、ここ最近まで私は魔術にのめり込んでいたから剣なんか贈ってくるやつなんていなかった。
せっかく楽しい楽しい実験をするんだ、その辺の均一で売ってある鉄剣を大量に買ってくるんじゃ味気ない。
「どっかに大量の剣をくれる人落ちてないかな~?」
「『大量の剣をくれる人』ではないがピースが欲しいものを用意できる人ならここにいるよ?」
「ウルメリアお兄さまが落ちてた!」
「こらこら…そんなこと言う悪い子はお父様に言いつけちゃうぞ~?」
「もう無断で王宮抜け出して謹慎中ですよーだ」
「あ、あはは…ところでピース!悩み事かい?僕でよかったら相談に乗るよ?」
この金髪サラサラなパリピイケメンはウルメリア第二王子殿下。
家族の中で最も私を可愛がってくれる人。
因みに父さんは殿堂入り。
「じゃあ付与魔術で遊びたいので壊れても問題のない大量の武器と魔液の原料の魔核と魔鉱と油をください。」
「おぉ!妹が私を頼ってくれている!全て用意できるがただで渡しても面白くない…そうだピース!私と賭けをしよう!」
「いいですよ。トランプですか?的当てですか?それとも宮廷魔術師志願者でも倒せばいいですか?」
「最後だけなんか物騒だね?いや的当てをしよう」
「分かりました、でも私王宮から出られませんよ?」
「ん?誰かと一緒なら問題ないだろう」
「怒られたらウルメリアお兄さまが庇ってくださいね」
「可愛い妹のためなら壁にも盾にもなるとも」
あれから馬車で第二王子邸の庭に移動した。
「さて早速だが始めようか」
「ルールは?」
「そうだな…炎魔法で的を交互に射抜いていく。先に外した方の負け。これでどうだ?」
「それで行きましょう」
「よし。先手は譲るよ」
「では遠慮なく」
50mからスタートして10mずつ離れていく仕組みだ。
私たちは交互に的を射抜いて行き、気が付けば的との距離は300mに達していた。
「ピースまた魔力制度の腕を上げたな?」
「お出かけの成果です」
「ん?あぁ。実りあるものでよかった」
「ぬぅ炎の形を保てん」
「ふっふっふっ私の勝ちですかね?」
「まだまだ!」
再び雑談しながら打ち合う。
400mに到達したところでこれ以上距離を伸ばせなくなり引き分けとなった。
「ここでは距離が足らなくなってきたな」
「ふぅ。そうですね。ですが400mでもかなり疲れるのでここから先は考えたくないですね」
「まだ十歳、いやそろそろ十一歳か」
「はい」
「だがまだまだ子ども、体力などすぐに付くさ」
「ですね!そのためにこれからも精進します」
「いいことだ。賭けだが引き分けたな。よって賞品は可愛い妹にプレゼントしよう」
「わぁ!ありがとうございます!」
「物は明日届けさせよう。ピース、帰りは馬車だがお父様から説明を求められたときに困らないようにメイドを付ける。気を付けて帰るのだぞ」
「はい!ウルメリアお兄さま本日はありがとうございました」
そういって私は王宮へと帰った。
余談ですが後手のクリス様が有利になる筋は
△4二王▲4八玉△3三桂▲6八金△5四角打つ▲3六角打つ△6二銀▲5四角△同歩▲1六歩△▲3二王△3八玉▲4二金△6六歩▲1四歩△4八銀▲5二金右△8八飛▲5三銀△6七金▲6四銀△7一角打つ▲7二飛△2六角成▲7四歩△6五歩▲7五銀△3六馬▲4五角打つ△同馬▲同桂△4六歩
となるのですが、誰が読めるんだよって筋ですね。
ただここで△4二王とせずに、後手から仕掛けると先手が勝ちに近づきます。
私はハイファンタジー小説で何を語っているのでしょうか?
深夜テンションって怖いですね。
おやすみなさい。よい夢を




